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頭がいい人のアイデアのつくり方

アタマガイイヒトノアイデアノツクリカタ

ふつうの人が巨万の富、大ヒット続々の理由

高橋昌義著

発明・審査委員長40年のプロが伝授

著者は40年にわたり、全国から応募されたアイデアや発明の審査を続けてきた著者が、過去に大ヒットした発明を取り上げ、発明家たちがどのようにしてアイデアをつくり上げていったのかを紹介。また、「ひらめきの感性」を磨き、アイデアをつくるための効果的なトレーニングとは。

主な内容

プロローグ 奇抜なアイデアのつくり方「十箇条」
Ⅰ 莫大な特許料を取得した大ヒット「アイデア」
Ⅱ 人助けに貢献した大ヒット「アイデア」
Ⅲ あまりにユニークな「アイデア」
Ⅳ 人類に貢献した大ヒット「アイデア」
Ⅴ アイデア力を磨く「ひらめきトレーニング」

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頭がいい人のアイデアのつくり方
価格
1540円(本体1400円)
判型
四六判
頁数
192 頁
発行日
2010.6.10
ISBN
978-4-87795-190-0

立ち読み

プロローグ 奇抜なアイデアのつくり方「十箇条」

創造性とは知的な遊び

 私は、四〇年間にわたって、全国から応募されるアイデアや発明の審査を続けてきました。そこで出合った膨大な数の発明を大別すると二つに分かれます。
 よくぞこんなアイデアがひらめいたものだと驚嘆させられるものと、複雑に組み合わされてはいても、過去の知識や技術を集積したものの二つです。
 発明というジャンルには、入試のような正解は用意されていません。あくまで独自のアイデアによって開発されたものでなければ、どんな高度な機器でも特許や実用新案の対象とはなりません。
 学力試験で優秀な成績を収めるには、すでに習得した知識を答案に活用する能力が求められますが、発明の場合は、常識の殻を破る発想力が不可欠です。それまでの常識では考えもつかなかった、まったく新しいアイデアが必要だからです。
 ゼロックスというアメリカの企業があります。「複写機」の代名詞になるほどよく知られていますが、その成功を支えている多くの特許技術にかなり貢献しているのが、パトル・メモリアル研究所のL・E・ウォールカップの発明だといわれています。
 そのウォールカップが創造性について、とても興味深いことを指摘しています。ポイントはこうです。

 創造性とは知的な遊びであり、創造性を豊かにするのは遊び心である。
 まったく生真面目な人は、保守的な考え方から決して迷い出ようとはしないし、普通でないこと、奇抜なことを探検する時間のゆとりもない。

 たしかに、常識という思いこみにとらわれているほど、遊び心は失われ、発想も貧しくなります。何より創造的なアイデアがひらめくことがなくなります。
 全国から応募されるアイデアや発明の審査を四〇年間続けてきましたが、いまいちばん気がかりなのは質の低下です。とくに青少年のアイデア力、創造力が衰えてきていることです。

遊び心は「ひらめきの泉」

 真面目に頑張っていても、ノルマや時間のプレッシャーを過度に感じていると、なかなかいいアイデアは浮かんでこないものです。自由な発想を楽しむ遊び心が押しつぶされてしまうからです。
 とくに発明や技術開発の場合は、難題を抱えたまま現場にいるときより、まったく無関係な環境にいるようなときに、パンチの効いたひらめきが訪れるということがよくあります。とりわけ、趣味などに没頭して遊び心にひたっているとき、何の前触れもなくひらめくことが多いのです。
 ところが日本人は、遊び心という言葉を聞くと、素直に受け取りにくい傾向があるようです。個人的には遊びの魅力に引かれていても、みんなで何かに取り組んでいるようなとき、遊びはマイナスのイメージになります。「どうも怠惰でだらしがない」「あいつはぐうたらで遊び人だ」「仕事と道楽をはきちがえている」となりやすいのです。
 しかし、創造性を生む遊び心とは、そのようなものではありません。常識にとらわれないで自由に発想することを楽しめる心です。まったく新しいアイデアを生み出す「ひらめきの泉」のような心です。

発明家たちは遊び心の達人

 発明品を審査していますと、よくぞこんなアイデアがひらめいたものだと審査員も舌を巻くほど驚かされることがあります。そうしたアイデアを生み出している人ほど遊び心が旺盛なのです。
 発明家にかぎらず、誰にでも面白いアイデアがひらめくときがあります。それはおそらく、遊び心が活発になっているときです。そんなときこそ、本人も予想しない画期的なアイデアがひらめいたりするものです。
 では、「ひらめきの泉」である遊び心とは、どんな心の状態をいうのでしょうか。そのヒントは、発明家たちの頭の中にあります。どんなときに奇抜なアイデアがひらめいたかを調べてみると、そこには次のような共通性があることがわかります。

  1. 徹底して興味を持ち面白がる
  2. 何事にも「なぜ?」「どうして?」と関心を寄せる
  3. 好きになるととことん好きになる
  4. 常識とか因習にとらわれない
  5. 人と違っていることを楽しむ
  6. ユニークで自由な発想を楽しむ
  7. 見方を変えて柔軟に考えられる
  8. 小さな疑問でもあきらめずに考え続ける
  9. きっといい方法があるはずだと前向きに考える
  10. なんとかして人の役に立ちたいと思う

 私は、これをアイデアのつくり方「十箇条」と考えています。歴史に残る発明家たちはまさしく、この遊び心の達人たちだったといえます。
 私は、この遊び心が活性化していて、それと潜在している独創性が共振するとき、ひらめきという火花が発生してアイデアが生まれるのではないかと考えています。
 歴史的な発明はもちろん、文学作品や絵画、彫刻も、そのすべてはひらめきによって触発されたアイデアからはじまります。
 パンチの効いた絶妙なジョークだってそうです。機知に富んだ落語家や司会者の当意即妙なジョークは、旺盛な遊び心に噺家としての独創性が共振して、ひらめきの感性が働き、笑いのアイデアが生まれる。それが聞く人の笑いをさそい出すのだと思います。

いまこそ創造的なアイデアを生み出す能力が必要

 わが国が経済成長を続けていたころ、あるアメリカのジャーナリストが「アメリカ人がデッサンを描き、日本人が彩色している」と表現していたのを記憶しています。アメリカ人が先駆的な特許技術を開発したのであって、日本はそれを導入してアレンジしながら生産力を高めているにすぎないと指摘しているわけです。
 そのときからやや遅れて来日したノーベル財団の幹部が、日本の科学者の前で講演したとき、「日本人はエキセレント(優秀)だが、クリエイティビティ(独創性)に欠けている」と評して話題になったこともあります。
「アメリカの豊かさは天然資源のみがもたらしたのではない」と言ったのはカーネギーですが、この言葉はアメリカ人の豊かなオリジナリティーがもたらす頭脳資源を自負しています。
 はたして、日本人は欧米に比してオリジナリティーや創造性に乏しいのでしょうか。
 わが国が世界第二位の経済大国にまで成長できた一番の理由は、国民の勤労や英知があったことです。同時に、欧米の頭脳が開発した特許技術やノウハウも強力な助人になったのです。そのために莫大なロイヤルティーを支払ってきました。
 日本はこれまで、世界各国から教育水準の高い国とみられてきました。ところが、なぜか、国際的に注目されるような特許技術の開発力は乏しいままです。
 私は、その原因の一つが「遊び心」の乏しさにあるのではないかと考えてきました。「遊び心」を大切にすることで「ひらめきの感性」が育つからです。
 サンフランシスコ州立大学のマービン・フリードマン博士がこんなことを述べています。
「成績で測られたもっとも頭のよい学生の多くは、必ずしも非常に創造的な学生ではない。言い換えれば、創造的な学生は、よい成績を取らないことが多いということである。そればかりでなく、創造的な学生は教師の不興を買いがちである、とさえいえる」
 創造性の豊かな学生ほど、型や枠にとどまることよりも「遊び心」に傾斜しやすい、遊び心には制約やプレッシャーがかからないから、自由に発想でき、さまざまな事象に柔軟に対応しやすい、というのです。
 日本を取り巻く環境は、かつてないほど厳しくなってきています。そのなかを生き抜いていくには、何より創造的なアイデアを生み出す能力が必要です。せっかくたくさんの知識を持っていても、そこに新しいアイデアが組みこまれなければ道を拓くことはできないのです。
 そこで本書のパート㈵からパート㈿では、過去に大ヒットした発明を取り上げ、発明家たちがどのようにしてアイデアをつくり上げていったのかを紹介していきます。
 パート㈸は実践編で、読者のみなさんが「ひらめきの感性」を磨き、アイデアをつくるための効果的なトレーニングができるようになっています。
 本書を読み終えたら、次は、みなさんがアイデアをつくりだす番です。

目 次

もくじ●頭がいい人のアイデアのつくり方

プロローグ 奇抜なアイデアのつくり方「十箇条」

創造性とは知的な遊び

遊び心は「ひらめきの泉」

発明家たちは遊び心の達人

いまこそ創造的なアイデアを生み出す能力が必要

I 莫大な特許料を取得した大ヒット「アイデア」

1 趣味の魚釣りがヒントで“世界一の特許料”

2 世界一単純なアイデアが大ヒット発明になる

3 板チョコの切れ目でひらめいた「折る刃」式カッターナイフ

4 家具の上に落としたオレンジ汁を見てひらめく

5 新商品開発のアイデアは少年時代の遊びがヒント

6 ハエとり紙からゴキブリ退治のアイデア

7 アイデアは簡単でも最初にひらめいたのが奇跡

8 世界最初の化学染料は十八歳の少年のひらめきから

II 人助けに貢献した大ヒット「アイデア」

1 海抜六〇〇メートルの山頂を水源にしたユニークなアイデア

2 同胞愛が生み出したアイデア「別れのテープ」

3 昆虫の羽の模様でひらめいた目玉風船のアイデア

4 魚の船酔いを証明したブランコ実験のアイデア

5 子供たちの花火遊びからひらめいた「タヌキ追放作戦」

6 電線や電池がなくても聞けるラジオがあったら

III あまりにユニークな「アイデア」

1 名案? 愉快なネズミ退治のアイデア

2 特許出願第一号はユニークな“棺おけ”のアイデア

3 南極の厳寒を利用した氷パイプのアイデア

4 魚釣りでひらめいた垂直に浮かぶ観測船のアイデア

5 遊び盛りの少年にひらめいたオートマチックのアイデア

IV 人類に貢献した大ヒット「アイデア」

1 うっかり落とした鼻汁が世紀の特効薬発明のきっかけに

2 逆転の発想が電気文明への道を拓く

3 ベルより前に電話のアイデアをひらめいた教師がいた

4 実験室で偶然目にした光景から新光線のアイデアが

5 画家の頭の中にひらめいた電信機のアイデア

6 「白鳥のビン」のアイデアで科学の大テーマを解明

7 患者の言葉で医療の歴史を変えるひらめきが

8 小さな疑問からひらめいた「光速」を測る超簡単アイデア

V アイデア力を磨く「ひらめきトレーニング」

1ひらめきの感性を磨こう

クイズで頭のウォーミングアップ

ひらめきトレーニング

2特許権取得に挑戦してみよう

日本の特許制度の歴史は新しい

特許初年度の出願件数はわずか四二五件

発明の質が問われている

特許の常識

「休眠特許」を活用しよう

プロフィール

高橋昌義(たかはしまさよし)

茨城県神栖市生まれ。大学在学中から発明や地球科学に興味を深め、全国規模の発明工夫展では、「電子ノイズ変調方式によるミュージックボード」や「プレセッション運動誘導装置」などの発明で入賞多数。「自動観測装置の開発」で内田科学賞受賞。「利根川下流地域の陸水の化学成分の変化と地形の動態の研究」で東京都より科学研究奨励費を受ける。

1990年4月、科学技術庁長官賞(功績賞)を受賞。

財団法人「新技術開発財団」(総裁・三笠宮寛仁親王殿下)の審査委員長を40年間務めた。

現在は発明評論家として独創性啓発事業に従事し、講演や執筆活動を行なっている。

主な著書に『あなたもできる発明』(東京新聞)『常識破りの成功発想』(共出版)『発明・発見のみちすじ』(大日本図書)『発明・アイデアのコツ』(日本実業出版社)『発明の歴史』(監修あすなろ書房)他多数。