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総合出版 コスモ21

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新・人を育てるリーダー 一流の聴き方

シン・ヒトヲソダテルリーダー イチリュウノキキカタ

多様性を伸ばす聴く力が身につく

牛島留理子著

Beingとして聴く

私たちは日常的に「人の話をきく」ことをしています。しかし、実際には「何のために相手の話をきくのか」はあまり意識せず、何となく自分に必要なことをきいていることが多いのではないでしょうか。つまり「きいているつもり」になっていることが多いと思います。
本書の著者が行うリーダー向けの研修でも、「上手なきき方ができていますか?」と尋ねると、やはり「もちろん、ちゃんときくようにしています」という答えが返ってくるといいます。
しかし、現場では「きく」ことについて色々な悩みを相談されることが多いというのです。
「気づいたら、相手の話をきくどころか、ほとんど自分がしゃべっていた」
「相手の言いたいことを先取りしてしまった」
「気づいたら、お説教をしてしまっていた」
「つい、そうじゃないよと否定してしまっていた」
「相手が話し終えるまで待てず、解決策を言ってしまった」
「相手が黙り込んでしまって、気まずい状態で終わってしまった」
このような「きき方」を続けているかぎりコミュニケーションはうまくいきませんし、人を育てることにもつながりません。

国際NLP認定トレーナー・聴き方マスター師範である著者は、年間150日以上、人材育成の研修に取り組んでいます。人間心理学を活かした、わかりやすい研修は大好評で、リピート率は98%以上の実績を持ち、高い評価を得ています。
とくに「自分で考え動くことができる人材」の育成がますます求められているなか、「うまくいかない」というリーダーたちからの相談が増えているといいます。「きく」の漢字には「聴く」と「聞く」と「訊く」がありますが、人を育てるリーダーに求められる重要な資質は「Beingとして聴く」力であるというのが、本書でいちばん伝えたいことです。
読みすすめると、これまでどんな「きき方」をしてきたのかを振り返ることができ、人を育てるリーダーに必要な「聴き方」がしっかりと見えてきます。

著者が「聴き方マスター講座」をスタートさせたころ、「人の話をきくなんて、その気になれば誰にだってできるでしょう。わざわざ講座に参加して勉強するほどのことではない」という声もきこえたそうですが、今は全国に「聴き方マスター」が誕生しています。
「話をきいてもらえる環境」が危うくなってきた今、本書は聴くことの可能性を実感させてくれます。また、すぐ応用できる「聴き方」のコツはすぐに活用でき、実践書としてもおすすめです。

主な内容

プロローグ 聴くことのゴールは相手の自立
1章 聴くために必要な準備
2章 何が聴くことを妨げるのか
3章 聴くために必要な「共感」
4章 聴いているつもりの落とし穴
5章 聴くことを阻む六つのバイアスパターン
6章 「何を話しても大丈夫」という聴き方
7章 相手への理解を深める実践的アプローチ
8章 相手を育てる聴き手の質問力
エピローグ 気づきは成長の第一歩

詳細な目次のページを開く

新・人を育てるリーダー 一流の聴き方
価格
1760円(本体1600円)
判型
四六判
頁数
224 頁
発行日
2024.2.14
ISBN
978-4-87795-432-1

立ち読み

プロローグ 聴くことのゴールは相手の自立

「話をきいてもらえる環境」が危うい

 この本のサブタイトルにある「Beingとして聴く」という言葉を読まれて、「それって、何」と思われた方もいらっしゃるかもしれません。効果的な「きき方」について書かれた本はたくさんありますが、「聴く」ことに焦点を当てた本は少ないようです。

 ご存じのように「きく」には3種類あります。「聞く」(相手の話が自然に耳に入ってくる)と「訊く」(相手に何かを尋ねる)と「聴く」(相手の話を理解しようとして意識的にきく)です。最近は相手の気持ちに共感しながら聴く「傾聴」をテーマにした本を目にすることも増えていますが、職場や家庭では「聞く」と「聴く」の違いはほとんど意識されずに使われているようです。

「聴く」ことは「訊く」ことを含めて、相手の話をしっかりと受け入れ理解することです。本書が注目しているのはこの「聴く」です。それには大きな意味がありますが、混乱を避けるため「きく」とひらがなで表記することを基本にしながら、場面に応じて使い分けています。

 さて、皆さんはどんなときに「誰かに話をきいてもらいたい」と思われますか。あるいは、タイミングよく話をきいてもらえて、なんだかホッとでき、もう少し頑張ってみようと思った経験はありますか。

 こんなふうに、話をきいてもらって元気になったという、とても素朴ですが、大切な経験をする機会が、今の日本社会では減っていると感じるのは私だけでしょうか。特にそのことを痛感したのは、2011年の東日本大震災から半年くらい経ったころです。

 私が住んでいる東京でも節電のために街が暗くなり、テレビではCMが自粛され、社会全体の雰囲気は沈んでいました。東北の方たちに思いを馳せているうちに、気づいたら欝々と過ごしている、そんな方たちが私の周辺でも増えていました。

 そんな状態が続くと症状が悪化し精神的な疾患にもつながりかねないため、その場合は心療内科やカウンセリングの力を借りることもできます。ところが日本では、そのような場所は病気になったときにだけ行くところという認識が強く、なかなか敷居が高くなっているようです。

 以前の日本社会には、ひとりで悩んでいると誰かが声をかけてくれたり、話をきいてくれたりする人のつながりがありました。ところが、そうしたつながりが希薄になっていき、家庭や同じ環境にいても誰にも話せず、ひとりで不安を抱え込む人が増え続けているように思います。そのなかには心を病む人も出てきています。

 ほんのちょっとでも良いから話に耳を傾けてくれる、そんな人が身近にいれば、それだけで随分、心が楽になるはずです。多くの人がそう考え、気軽に声をかけていた時代は、残念ながら過去のことです。ならば、あらためて身近な人をサポートする力を学ぶ場を作りたい。そう考えて、私は『NPO法人ハッピーステージ』を立ち上げました。その一環で「聴き方マスター講座」もスタートさせました。

 当初は、「人の話をきくなんて、当たり前にやっていることであり、わざわざ講座に参加して勉強するほどのことではない」そんな声もきこえてきましたが、参加者は着実に増え、14年経った今では「聴き方マスター」が全国に誕生しています。

心理的安全性はきくことからはじまる

 私は元々、人材育成コンサルタントとして、数多くの企業の人材育成を支援してきました。人材育成にはさまざまの要素がありますが、じつはそこでも「きく力」の重要性が再認識されてきています。相手の話をきくことは、家庭や職場での悩みを和らげるためだけでなく、“人を育て組織力を高める”ためにも重要だからです。

 現代の企業や組織を取り巻く社会環境の変化はますます速くなり、多様化しています。それに対応するには、できるだけ素早く状況の変化をとらえて、的確に意思決定をし、適切なアクションを起こすことが求められます。

(以下つづく)

目 次

新・人を育てるリーダー 一流の聴き方……もくじ

プロローグ 聴くことのゴールは相手の自立

「話をきいてもらえる環境」が危うい

心理的安全性はきくことからはじまる

心理的安全性の四つのキーワード

これまでのコミュニケーションでは通用しない

聴くことの可能性は無限大

きいているつもりの落とし穴

話し手はまず心の重荷を下ろしたい

ふたつの聴き方

BeingのはずがDoingになってしまうのはなぜか

相手にとっての真実は何か

少し時間はかかっても組織力が高まる

聴き手のBeingを見つめ直すことも大切

1章 聴くために必要な準備

言葉にならない言葉に気づく

「きく」には三つの漢字がある

コミュニケーションはキャッチボール

耳と目と心で聴く

心の中に空のコップを準備する

話すこと、聴くことで考えが整理されていく

空のコップを準備できないわけ

自分のコップの中身をコントロールする

2章 何が聴くことを妨げるのか

思考が聴くことを邪魔する

人は興味のあることのみを聴こうとする

自分の興味と相手の興味の違い

興味の向け方には傾向性がある

思い込みが起こる最初の段階

思い込みが膨らむ次の段階

知識・経験の違いも聴くことを難しくする

3章 聴くために必要な「共感」

共感とは何だろう?

共感とは理解を試みること

共感と同感は違う

共感には想像力と感受性が必要

共感はちゃんと相手に伝えてこそ意味がある

共感は楽しさ倍増、辛さ軽減

4章 聴いているつもりの落とし穴

聴き手の反応が無意識に言動に現れる

無意識に相手をディスカウントしてしまう

ネガティブな感情も相手にとっては大切な感情

人は誰でも考える力を持っている

「助けてあげたい」という気持ちが役に立たないこともある

「大丈夫」の使い方には気をつけよう

相手の変化や成長をディスカウントしていないか?

5章 聴くことを阻む六つのバイアスパターン

情報を歪める思考パターン

六つのバイアスパターン

全か無か思考

ネガティブな心のフィルター

拡大解釈・過小評価

ネガティブなレッテル貼り

べき思考

固定観念

バイアスを緩める対処法

(1)全か無か思考への対処法

(2)心のフィルターへの対処法

(3)拡大解釈・過小評価への対処法

(4)レッテル貼りへの対処法

(5)べき思考への対処法

(6)固定観念への対処法

6章 「何を話しても大丈夫」という聴き方

安心できる環境がなければ話しづらい現実は変わらない

安心の環境を整える六つのポイント

(1)物理的環境を整える

(2)心理的環境を整える

(3)自分のスイッチを聴くモードに切り替える

(4)心を整える

(5)身体を整える

(6)親和性を高めて心の距離を縮める

聴き手としての自己一致

7章 相手への理解を深める実践的アプローチ

相手の地図を受け止める

相手の自己理解を促す聴き方

(1)バックトラッキング

(2)要約して伝え返す

(3)感じたことをフィードバック

相手の気持ちを理解する

気持ちとは何か?

気持ちを引き出すアプローチ

沈黙への働きかけ

言葉にならない言葉に気づく

8章 相手を育てる聴き手の質問力

聴き手の質問で話し手の意識の方向性が変わる

閉じた質問と開いた質問

Whyの質問は特に注意が必要

質問には前提が含まれている

否定質問と肯定質問

相手の視点を変える質問

(1)第三者の視点を借りる質問

(2)チャンクを変える質問

時間軸を効果的に使う

相手の柔軟性を高め、相手理解を深める質問

あくまで相手を主体にして質問する

エピローグ 気づきは成長の第一歩

成長は気づきからはじまる

身近な人の話を聴ける力を身につけよう

プロフィール

牛島留理子(うしじまるりこ)

有限会社ニーズ代表、NPO法人ハッピーステージ代表理事。

ANA国際線第一期選抜メンバーとして成田空港支店転属後、観察力と対話力を活かしたサービスの提供でファーストクラスのお客様から多くのお礼状を頂く。人財育成部門に転属後は「カスタマーファースト研修」を企画し、各空港支店客室部へ展開してANAのサービス品質向上を図る。教育担当者としての経験を活かし2003年に有限会社ニーズを設立。年間150日以上、4000人近くの研修を20年以上にわたり実施。リピート率は98%以上の実績。人間心理学を活かしたわかりやすい内容と受講者との対話を大切にした研修は、参加者を引き付け、好評。そのなかで、「人を育てるリーダー」には「聴く力」がますます重要であると認識し、研修では聴き方の重要性を伝えている。2010年にはNPO法人ハッピーステージを立ち上げ、30年以上学んだ心理学をベースに気軽に心理学を学べる場を提供し、「聴き方マスター」の養成も進めている。