医者がすすめる「演歌療法」改訂版
イシャガススメル「エンカリョウホウ」カイテイバン
最前線で実証! 健康長寿になる「歌い方」
周東 寛著
カラオケルームが新しい医療の場に
「幸福ホルモン」の分泌が活性化し、患者さんがイキイキしてくる! 著者は、自身のクリニックで、40人ほど入れるカラオケルームを設け、医療にカラオケを積極的に取り入れるなど、「健康カラオケ」の効果を実証。演歌歌手の肩書も持つ著者直伝のカラオケ上手のコツも披露。
立ち読み
はじめに カラオケルームが新しい医療の場に
私のクリニックでは、医療にカラオケを積極的に取り入れています。まさしく「健康カラオケ」として患者さんの治癒力アップに活用しているわけです。
院内にある40人ほど入れるカラオケルームは、いつでも患者さんが自由に利用できるようになっていて、週に2度は専門家の指導でカラオケ教室も開いています。
カラオケを取り入れてみて何より顕著なのは、患者さんがイキイキしてくることです。それは、カラオケを楽しんでいると脳内ホルモンの分泌が活性化され、心地よさが生まれるからだと思われます。それで私は、こうしたホルモン群を「幸福ホルモン」と呼ぶことにしています。
体が不調になり、健康に自信がもてなくなると、どうしても気持ちが沈みがちになるものです。そのままでは治癒力も低下してしまいますが、カラオケを取り入れると、
「沈みがちだったのに、元気が出てきた」
「気持ちが楽になり、治療にも前向きに取り組もうと思う」
「心が明るくなり、若返ったと言われる」
といった反応がとても多くなります。
なかには、
「歌うようになって更年期のうつ状態から解放された」
「物忘れが減って認知症の予防にも良さそう」
という方もいます。
カラオケをはじめると、身体面でも嬉しい変化が起こってきます。
「高血圧気味だったのが正常値になった」
「よく眠れるようになって不眠症がなくなった」
「長年苦しんできた頭痛が消えた」
「ゼンソクが軽くなった」
という反応が、かなりよく認められます。
それは検査データにもはっきりと現われてきます。一つ症例をあげてみましょう。
原因不明の本態性高血圧のAさん(66歳、男性)は、以前は最大血圧が200mmHgまで高くなることがしばしばでした。それが治療と並行してカラオケをやるようになり3カ月ほどたったころには、最大血圧が140mmHgにまで下がり、それ以降も安定しました。
じつは、この患者さんが来院した当初は、降圧剤などで対応していました。たしかにこれで血圧は下がるのですが、あくまで一時的で、朝に飲んだ降圧剤が効いている間は安定します。
その後は不安定で、1日の間にも血圧は大きく変動しました。降圧剤を止めると再び上昇してしまいます。それでまた降圧剤を夜に再び追加するというくり返しでした。
それがカラオケをはじめてしばらくすると、降圧剤である程度血圧が下がったあとは、薬を減らしても再上昇せず、安定するようになったのです。
それだけではありません。Aさんの中性脂肪値も、201mg/dlからほぼ正常値の136mg/dlにまで下がっていたのです。
こうした症例の報告は、ほかの医療機関でも増えてきています。
京都府立医科大学での臨床例を紹介します。
肥満症の女性の患者さんがいて、心理テストを受けると、ストレスの程度を示す指標が60点満点中55点、うつ状態を示す指標が70点満点中62点もあったといいます。そこでカラオケを取り入れ、週に2、3回(1回に2、3時間)の割合で半年ぐらい続けたところ、どの点数も大幅に低下していました。体重も10キロ近く減り、兆候のあった糖尿や高血圧も改善されたといいます。
これは横浜労災病院などで認知症患者も治療の一環としてカラオケを導入した臨床例ですが、物忘れ度がかなり低下したといいます。私の医院でも「ひどかった物忘れが歌うようになって少なくなった」という声は数多く聞かれます。
このことは、東北福祉大学と株式会社第一興商の共同調査研究で、カラオケが認知症の予防に有効であると報告されていることとも一致します。
カラオケに取り組む患者さんの様子を観察していて、あらたにわかってきたこともあります。
一つは、脳の活性化です。
好きな曲を気持ちよく歌っているうちに脳波がアルファ波に変わり、心身がリラックスしてストレスが取れてきます。カラオケで歌っていると心地よさが広がってくる
のも、このことと関係しています。
カラオケで歌い慣れてくると、新曲にも挑戦したくなります。はじめは、それなりに緊張して歌うでしょうが、そのとき脳波はベータ波になっています。しばらく歌っていると慣れてきて、気落ちよく歌えるようになります。このとき脳波はアルファ波に変化しますが、それが脳を活性化させるのです。
このように、脳波から見てもカラオケはストレス解消に適していますし、脳の活性化にも向いていることがわかります。
もう一つは、歌う基本を身に付けて歌うと、健康カラオケの効果がさらにアップするということです。それは、腹式呼吸や腹式発声などとも関係しています。それで私のクリニックにあるカラオケルームでは、専門家を招いてカラオケ教室を開くことにしたのです。
さらに私が注目したのは演歌による健康効果です。
日本人に馴染みの深い演歌には、とくに顕著な若返り効果があることがわかってきたのです。それは演歌特有の「ビブラート技法」や「うなり節」といった歌い方と関係があります。「演歌療法」として、とくに中高年の方におすすめしています。
しかも、歌詞を丸暗記して歌うようにすれば、認知症の予防にもなります。
無縁社会という言葉は現代社会における人間関係の稀薄化に警告を発しましたが、家庭内の交流まで少なくなっています。
カラオケは家族をはじめ周囲との交流を深める機会を与えてくれます。長年の医療体験で、家族仲がいい人ほど病気の治りが早いと実感していますが、カラオケで身近な人との関係が親密になることは治療の面でのプラスも大きいのです。
じつは私も若いころからたいへんなカラオケ好きで、昼休みにはカラオケルームで患者さんに混じって歌うこともよくあります。それが、患者さんとの交流を深める助けにもなっています。
もっと上手に歌いたいと思い、専門家の指導で発声の勉強をしながら腕を磨き、ステージで歌手になったような気持ちで歌うこともしばしばあります。
本書は、ますます高齢化が進む今日、健康管理や病気の予防にカラオケを上手に活用する方法を紹介するため、前作の改訂版として執筆しました。
健康の輪、喜びの輪を広げる助けになれば、これ以上の幸せはありません。
目 次
もくじ・・・医者がすすめる「演歌療法」 改訂版
はじめに カラオケルームが新しい医療の場に
パートⅠ 知らないと大損! カラオケが健康にいい12の理由
「幸福ホルモン」の分泌が高まる
健康的な「ハイ体験」ができる
脳波がアルファ波に変わる
「1/fゆらぎ」を体験できる
手軽に音楽療法効果が得られる
ポジティブな回想体験ができる
カラオケの「音と画像」が脳を刺激する
年齢を問わず気持ちを発散しやすい
●コラム カラオケはガン対策にも活用できる
女性特有の健康障害を予防できる
人と人の交流を豊かにする
●コラム 歌は心の絆を結んでくれる 橋本 都
家族で共通の場がもてる
「演歌療法」で身も心も若返る
●コラム 演歌は日本人の心のふるさと
パートⅡ 演歌療法で健康長寿を実現!
演歌なら腹式呼吸が身につきやすい
●コラム「へそ踊り」でさらに腹筋を鍛えよう!
腹式発声は生活習慣病の予防にも効果的
●コラム 失語症を発声練習で克服 佐藤友治
自律神経失調症が驚くほど改善
●コラム 全身を使って発声する
演歌特有の「ビブラート技法」で耳鳴りや認知症が解消
「うなり節」でさらに健康アップ
☆呼吸器の正常化、ゼン息や肺気腫の予防・改善
☆慢性閉塞性肺疾患(COPD)の予防・軽減
☆体細胞の老化予防
☆脳細胞の老化防止、内臓の強化
☆血行促進効果、血圧降下作用
☆感染症の予防
☆腰痛解消、便秘解消
☆ハゲの進行も食い止める
☆ガンの抑制
●コラム 演歌には座禅と同じリラックス効果が
人前で演歌を歌うと健康促進効果がさらにアップ
☆パニック症候群が解消する
☆ホルモン分泌をさらに活性化
☆スポーツ選手に多い「イップス症候群」も解消
歌詞の丸暗記は物忘れや認知症の予防になる
●コラム 医療現場ではこんな改善事例も
パートⅢ 誰でもらくらく腹式呼吸・腹式発声マスター法
すぐ実践できる腹式呼吸のトレーニング
☆腹式呼吸5つの基本トレーニング
☆歩きながらできるトレーニング
☆高齢者向き簡単トレーニング
☆腹式呼吸が腸管免疫をアップ
●コラム 寝たきりの人でもできる“ごろごろ体操”
腹式発声をマスターしよう
☆誰でも簡単にできる腹式発声トレーニング法
●コラム「あ、え、い、お、う」発声練習はうなり節にも有効
☆発声トレーニングはプロの歌手でも欠かせない
●コラム 舌のトレーニングを行なう
☆腹式発声ができたら次は歌い込む
●コラム 腹筋を鍛錬する腹式発声は健康にもいい
パートⅣ 医師&歌手がすすめるカラオケ上手のコツ
まずは最初の曲選びが大切
☆自分に合った曲の選び方
☆童謡から始めてもいい
選んだ曲はしっかり歌い込む
☆最初はあまり音程にこだわらず歌いきること
●コラム 声量がついてきたらメリハリにも気をつけよう
☆回数をこなす
もっと上達する隠し技
☆アカペラも上達法の一つ
☆歌詞を素読し丸暗記するとさらに上達
●コラム 歌詞の意味をよく味わって歌う 西條 徹
“持ち歌”を増やそう
☆1曲ずつ順番にマスターしていくほうが無難
☆歌詞を覚えるコツ
●コラム 医療に従事しながら歌手活動も
笑顔あふれる人生を応援 湊 尚子
上手くなる早道は“ものまね”から
一度に何時間も歌うより、毎日数曲歌うほうが効果的
下手でも本気で取り組めば必ず上達
☆大声で最後まで歌いきるクセをつける
☆カラオケ教室に通うなら相性のいいところを
●コラム ときには女性でも男歌を、男性でも女歌を
体を使って表現すると歌唱力がいちだんと向上
☆身振り手振りで歌うと歌心が深くなる
●コラム 悲しいときはその気持ちを思いっきり表現してみる
☆マイクの位置やお辞儀にも気くばりする
●コラム プロが教える歌を楽しむ心得 佳山明生
パートⅤ 健康カラオケは新しい医療の流れにマッチ
全人的医療・予防医学に健康カラオケはぴったり
▽全人的医療から見た健康カラオケ
▽予防医学から見た健康カラオケ
●コラム 歌を通して健康増進運動 斎藤恵理子
健康カラオケは安価で手軽にできる「アンチエイジング」
▽「アンチエイジング」には抗酸化対策が大切
▽健康カラオケと食生活の改善で抗酸化対策
健康カラオケは脳のアンチエイジングにも有効
●コラム これがアンチエイジングにいい健脳成分
カラオケで夫婦や家族の交流が深まる
▽夫婦仲がいいほど病気が早く治る!
▽家族全員でカラオケを楽しめば円満家庭
子供を守る環境づくりにも活用できる
▽子供の自立を助けるきっかけに
▽カラオケで地域のつながりを
おわりに