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あなたの歯の寿命、大丈夫ですか? 歯医者さんとの賢い付き合い方

アナタノハノジュミョウダイジョウブデスカハイシャサントノカシコイツキアイカタ

知らないと損する! 世界基準の歯科治療

石井 宏著

自分の歯の治療について“最善の選択”をする

〇日本の歯の治療(とくに歯の根の治療)の半分以上は失敗している!
「以前、治療してもらったのに、なぜかまた痛くなってきた」
「治療後も鈍い痛みが続いている」
こんな体験をしている人がたくさんいます。

これは、日本には歯科治療の専門医制度がなく、一般医がすべての治療を行なっていることにも関係していると著者は指摘しています。
著者が日本で一般歯科医として治療を行なったのち、歯科治療では世界トップクラスのペンシルバニア大学大学院に留学し、修了後は東京で歯内療法(歯の根の治療)の専門医として活動しています。
アメリカでは歯科も専門分野に分かれていて、一般医が対応できない歯の治療は専門医が対応しています。その結果、歯の根の治療(抜髄処置)の成功率は9割以上といわれています。そして、今は、それが世界基準の歯科治療になっています。
ところが、日本ではいまだに一般医がほぼすべての治療を行なっています。そのことの不利益を被っているのは患者である私たち日本人です。
本書では、日本における歯科治療の課題として3つのことがとくに指摘されています。
①日本には専門医制度がいない
②先進国のなかには専門医制度が確立している国があり、そこでは専門医を養成する公的なプログラムや制度が確立されている
③そうした国の専門医と、日本の一般医の間には知識と技術に大きな差がある

筆者は、こうした状況を改善する試みとして、専門医として治療に当たる傍ら、日本でも世界基準の歯科治療を行なう歯科医の養成に取り組んでいます。ペンシルバニア大学歯内療法学科とコラボして、ペンシルバニア大学大学院プログラム(専門医養成プログラム)をコンパクトにまとめ、全国から参加した歯科医を対象に1年間にわたって学ぶ研修を主宰しています(2010年〜)。

本書が伝えたい最重要なキーワードは「患者利益」です。
日本でも専門医がいることを知っておくだけで、患者さんが“最善の選択”ができる可能性が広がるに違いないという著者の思いが伝わってきます。

主な内容

1章 日本の歯科治療における現実
2章 歯科医師に求められる能力とは?
3章 資本主義的な歯科医院経営の弊害
4章 あなたにとって「最善」の歯科治療とは
5章 歯医者さんとの賢い付き合い方

詳細な目次のページを開く

あなたの歯の寿命、大丈夫ですか? 歯医者さんとの賢い付き合い方
価格
1650円(本体1500円)
判型
四六判
頁数
136 頁
発行日
2021.2.3
ISBN
978-4-87795-396-6

立ち読み

はじめに

 私は、東京で開業している歯内療法専門医です。

 なぜ、このような本を書こうという思いに至ったのか。そのもっとも大きな理由は、患者さんに間違った選択や後悔をしてほしくない、ただその一心からです。

「歯内療法」とは、字のごとく歯の内部の治療のことです。私は専門医制度のあるアメリカで、その専門医になるための正規のプログラムを修了し、日本に戻ってからはこの分野の専門性を構築し、普及するために努めてきました。しかし、日本ではまだまだ専門医の数は少なく、“かかりつけ医”(一般的な歯科医師)との連携も進んでいるとは言い難い状況です。

 私のもとには、かかりつけ医から紹介された患者さんが歯内療法を受けるために訪れます。これまで連携したかかりつけ医はすでに500人を超えております。その点では、一般的な日本の歯科医師とは異なる立場で歯の病気と向き合ってきました。

 そこで見えてきたことがあります。それは、自分の歯の治療について最善の選択をする機会が患者さんに提供されていない場合があるということです。

 私は24歳で日本の歯科大学を卒業し歯科医師となりました。それから3年目、まだ27歳でしたが、家庭の事情から自分の生まれた土地で一般的な歯科医院を開業しました。ひたすら治療の毎日が続くなかで、歯科医学についてもっと勉強したい、技術的なスキルや知識をもっと高めたいという思いから、できるかぎり時間を見つけては研鑽を積みました。

 それによって治療レベルを高めることはできましたが、同時に日本の歯科治療の課題も見えてきたのです。それは、本書の中でも詳しくご説明しますが、

①日本には専門医制度が確立していない

②先進国のなかには専門医制度が確立している国があり、そこでは専門医を養成する公的なプログラムや制度が確立されている

③そうした国の専門医と、日本の一般医の間には知識と技術に大きな差がある

 ということでした。先進国の中には、歯科治療をさらに細かい専門分野に分け、それぞれの臨床専門医を養成している国がありますが、日本にはそのような制度がなく、専門知識や技術において後れを取っていることを痛感したのです。

 私は元来、一つのことを突き詰めたい性格で、専門医としての教育を本場アメリカで受けたいと考えるようになりました。それが、開業して9年後、36歳のとき叶ったのです。

 私がアメリカで専攻したのは「歯内療法」で、いわゆる「根管治療(根の治療)」と呼ばれる分野です。歯科治療のなかではもっとも難易度の高い分野の一つと言われています。当時の日本には、この分野の専門医レベルの臨床知識や技術はほとんど入ってきていませんでしたし、専門的な教育を受けた歯科医師もほぼいない状況でした。それだけ日本の歯内療法は遅れていたとも言えます。

 アメリカに渡った私は間もなく、帰国後は自分が日本において歯内療法の先駆的役割を担うことになると確信しました。

 2年後日本に戻った私は、ほどなく自費診療の歯内療法専門医院を開業しましたが、周りの歯科医師はそのようなスタイルでの開業を非常に心配しました。その理由は、日本では歯内療法における治療費の設定が非常に低いため、アメリカと同程度の金額で歯内療法を行なおうとしても、患者さんの需要があるはずがないと考えられていたからです。しかし、蓋を開けてみれば、私が提供する歯内療法を求める患者さんは、一人の歯科医師では到底診察できないほど増えていったのです。

 根管治療は、もちろん日本の一般的な歯科医院でも行なわれています。ところが、

「以前、治療してもらったのに、なぜかまた痛くなってきた」

「治療後も鈍い痛みが続いている」

などと訴える患者さんがかなりいるという事実があります。後ほど述べますが、「日本の根管治療の半分以上は失敗している」という調査データもあるほどです。私のもとにはそうした患者さんも数多く訪れますが、最初に専門医が治療を行なっていたら、患者さんは何度も治療をくり返さなくてよかったのに、と思うことはよくあります。

 専門医として開業してからすでに10年以上になりますが、私は日本における歯内療法の向上のために多くの歯科医師と連携を深めてきました。その結果、専門医の必要性が少しずつ理解されるようになってきた一方で、新たな課題が生まれてきています。それは、今までの治療技術や環境をそのままにしているにもかかわらず専門医と同等の費用で治療を手がけるケースが増えていることです。

 アメリカでは、一般医では対応できないレベルの歯の治療は、その症状に合った専門医が対応するようになっています。そのために、たとえば臨床科目を6つの専門分野に分けて、それぞれの専門医を養成しています。ところが日本では、特に私の専門である歯内療法の分野に関するかぎり、専門的な学習やトレーニングを十分に受けないまま、一般医が自費診療の治療を提供しているケースが多くなってきているのです。

 先に述べましたように、歯内療法は歯科治療のなかでも特に難易度が高い分野です。機材や材料を真似ただけで治療の成功率を上げることができるわけではありません。実際の成功率は従来の日本の平均レベルなのに、アメリカの専門医並みの治療費が求められる例もあります。私の医院に来院する患者さんのなかにも、他で高額な歯内療法を受けたのに歯の状態が好転せず駆け込んで来られる方はかなりいます。

「当院は専門医院であり、治療の成功率が極めて高いから、他の医院に行かないほうがいい」と言いたいのではありません。私のところで治療しても全員が100%満足できる結果が得られるとはかぎりません。しかしだからこそ、高度な専門的知識と技術を備えた歯科医師をもっと増やしていくことが患者さんのためになると考えているのです。

 日本において専門医制度が広がるメリットは、治療レベルが上がることだけではありません。患者さんが“最善”の治療を選択できる可能性が広がるということでもあるのです。専門医がいることを知っていれば、かかりつけ医にすべてを任せるのではなく、治療内容によっては専門医を紹介してもらって、より確かな治療を選ぶこともできるからです。

 本人が気づいている・いないにかかわらず、歯の治療で不利益を被っている患者さんはたくさんいます。それは私が“専門医”として、「患者さんとかかりつけ医」の間に入り専門的な治療を行なうなかで日々感じていることです。

 アメリカでは、“かかりつけ医”が「患者さんと専門医」の間に入って調整しています。かかりつけ医が自分で治療できない場合は、患者さんにそのことを告げ、専門医につなぎます。日本でもそうした医療体制が望ましいと思うのですが、現時点では、多くのかかりつけ医がかなり広い範囲の治療を行なうことで、結果として患者さんが不利益を被る場合も少なくありません。

 もちろん、多くの歯科医師は一所懸命、患者さんのためになると信じて日々治療に当たっていると思いますが、現状では、医療者側が考える「患者利益」と、患者さん自身が感じる「利益」との間にギャップがあると感じることが少なくありません。

 本書をお読みになり、どうして、そのようなことが起こっているのか知ることで、患者さんが自分に合った選択肢が他にあるのかもしれないと考える余地が生まれます。当然、不利益を被るリスクを下げることもできます。

 本書の最重要なキーワードは「患者利益」です。患者さんに間違った治療を選択してほしくない、せっかく治療したのにと後悔をしてほしくない。少しでも歯の寿命を延ばせるように歯医者さんと賢く付き合ってほしい。その一心から執筆を決意しました。

目 次

あなたの歯の寿命、大丈夫ですか? 歯医者さんとの賢い付き合い方……もくじ

はじめに

1章 日本の歯科治療における現実

誰もが皆、「良い歯医者さん」を探している

日本の歯内療法の成功率は半分以下

成功と失敗の差はどこで生じるのか

歯科治療の落とし穴

アメリカには一般医と専門医がいる

選択肢が多いというメリット

日本の歯科医師の現状

2章 歯科医師に求められる能力とは?

歯科医師が診察で行なっている3つの手順

「診査」はなかなか難しいステップ

「診断」は病名をつけること

「意思決定」は患者さんとともに

歯科における専門医の仕事

治療済みの歯が何度も痛む理由

痛みが取り除けない理由

口腔内で感染症が起こるしくみ

“歯科医師には知識や技術がある”という常識は正しいか

歯科医師に本当に必要な能力とは

自分の歯を残すことの大切さ

3章 資本主義的な歯科医院経営の弊害

日本独特の保険制度

歯科医師と経営

最近の歯科医院の傾向

4章 あなたにとって「最善」の歯科治療とは

「最善」の歯科治療は、患者さんごとに違います!

あなたにとっての「最善」は、あなたにしかわからない

医療者側が考える「最善」のパターン

医療者も人間です

医療者と患者さんの間にあるギャップを知る

どうしてもギャップが埋まらない場合

5章 歯医者さんとの賢い付き合い方

患者さんの意思決定

あなたが歯科治療を受ける目的は?

歯科医師の「伝える力」を見極める

歯科医師が教える、「良い」歯科医師を見分ける裏技

・印象や直感こそ、ものすごく大事

・尊厳をもったコミュニケーションをとる

・「わからない」をアピールする

・費用ははっきりと聞く

・先生自身はどうしているのかを聞く

・情報の真偽の見分け方

・症例数に惑わされない

・歯科医師の本音を知る

良い歯科医師の条件

あなたにとって「良い」歯科医師・歯科医院の選択の基準

おわりに

プロフィール

石井宏(いしいひろし)

1968年東京生まれ。1993年神奈川歯科大学卒業。2006年ペンシルバニア大学大学院修了。

帰国後は東京にて歯内療法専門医として診療を行なうとともに、日本における専門医養成を目的とするPESCJ(Penn Endo Study Club in Japan)の主宰者でもある。

趣味はと聞かれると、いつも「仕事」と答えるしかないので困る。最近リラックス・リフレッシュできることを探索中。学生時代はサッカーをやっていたが現在は観戦のみ。毎朝1時間程度運動するのが日課。