間違いだらけの補聴器選び
マチガイダラケノホチョウキエラビ
60歳からはじめる健康法/そうだったのか!「よく聞こえない」がそのままだと大変
中村雅仁著
もっと早く使っていればよかった!
補聴器メーカーに12年勤務経験、現在、「補聴器セカンドオピニオンサービス」を立ち上げるなど長年、補聴器の啓蒙、相談に乗ってきた著者だから語れる「間違いだらけの補聴器選び」。補聴器選びで大切なのは、自分の耳の状態を正しく理解しながら、上手に付き合うこと。健康長寿の心強い相棒(=パートナー)となりうる補聴器の世界へ誘う。

- 価格
- 1430円(本体1300円)
- 判型
- 四六判
- 頁数
- 176 頁
- 発行日
- 2014.10.14
- ISBN
- 978-4-87795-299-0
立ち読み
はじめに
「最近、全然聞こえてないみたい。何回も言い直すのが当たり前だし」
「え? でも山川(仮称)さんところのお母さんって、こないだ補聴器買ったって言ってなかった?」
「そうなのよ。新しい補聴器買ったから、これで一安心と思ってたんだけど、やっぱりよく聞こえていたころのようにはいかない。ちょっとはマシになったけど……。
家族がちょうどいいくらいにテレビの音量を下げたり、小さい声で話しかけると、やっぱりダメね」
ある喫茶店で、パソコンのキーボードをカチャカチャ叩きながら仕事をしていた私の耳に、隣のテーブルからこんな会話が聞こえてきました。
私は、その会話の途中、何度も身を乗り出して、
「ちょっとすみません。突然ですが、私、補聴器メーカーに勤めている者なのですが、その補聴器、購入されてからどれくらいたっておられますか?」
と尋ねそうになりました。もちろん、そんなことをしたら驚かれますから、じっと堪えましたが。
じつは、このとき私が飲み込んだ言葉はそれだけではありません。
「価格はいくらくらいのものですか?」
「どこで買われましたか?」
「補聴器を購入された一番の目的は何でしたか?」
「これまで調整は何回くらいされていますか?」
「片耳にされていますか? それとも両耳にされていますか?」
「話すときは正面からゆっくり話されていますか?」
もし本当にこんな質問にお二人が耳を傾けてくれたとしても、山川さんは「そんなことは知らない」と答えたでしょう。
私は、補聴器メーカーに12年ほど勤務した経験があります。その間に私が接した補聴器取扱店の担当者は、のべ3600人。メガネ店から専門店担当者までさまざまです。
その後は“独立系補聴器アドバイザー”として活動していますが、メーカー時代から補聴器の直接相談を受けた件数は5700件以上にのぼります。
そのなかでいちばん痛感しているのが、聴力が低下し、いちばん不便を感じている人たちに必要な補聴器の情報があまりに不足していることです。
・よく聞こえないままにしておくとどうなるのか?
・補聴器を着けると、どれくらい聞こえるものなのか?
・補聴器を着けると違和感はないのか?
・補聴器を着けると見た目が悪くないのか?
・取り扱いは難しくはないのか?
・耳鼻科で受診する必要があるのか?
・補聴器はどこで取り扱っているのか?
・補聴器の種類や価格はどうなっているのか?
・着けてしまえば、その後の調整は必要ないのか?
こんな疑問を抱いても、わかりやすく答えてくれそうなところはなかなか見つかりません。
もちろん、今はインターネットがありますから補聴器について調べることはできます。補聴器メーカーのカタログや冊子を見たり、補聴器に関する書籍を読んだりもできます。あるいは、近くに補聴器を使用している人がいれば話を聞くことができるかもしれませんし、補聴器取扱店が近くにあれば出かけて行って直接話を聞くこともできるでしょう。
しかし、文字化されているものはどれも、自分の耳の状態や生活環境を知っていて説明している情報ではないので、なかなかピッタリくる情報を探すのは難しいと思います。
それならば、すでに使用している人の話を聞くのがいいでしょうが、なかには自分が補聴器を使用していることに触れられたくないと思っている人もいます。
取扱店で直接話を聞くのが早そうですが、高額なものを売りつけられるのではないかと不安になるかもしれません。
結局、耳が聞こえづらいと感じている人が本当に知りたい情報はなかなか得られないまま、自分に合わない補聴器を選んでしまうことも多いのです。まさしく、本書のタイトルである“間違いだらけの補聴器選び”をしてしまいやすい状態になっています。
それでも、いずれは補聴器使用者にいちばん必要な情報を提供する本が出るのではないかと、私も待ち望んでいました。ところが、補聴器に携わって14年、一向にそんな本が現われる気配がありません。
それならば、補聴器の現場にいつも身を置いてきた私が書くべきではないかと考えたのがきっかけで、本書が出版されることになりました。
日本は今、かなりのスピードで高齢化が進んでいます。すでに、ほぼ4人に1人が65歳以上という人口構成になり、今後はさらにその割合が高くなっていくといわれています。
人生は長くなりますが、健康寿命を少しでも長くするには聞こえをいい状態に保つことも大事です。
相手の話し声を聞き取ることで人とつながることができますし、いろんな人と交流することも楽しくなります。テレビの音や電話の声を聞き取ることで新しい情報の刺激を受けることもできます。
毎日何気なく聞いている鳥がさえずる音や子供の笑い声は生きていることを実感させてくれますし、近づいてくる車のエンジン音や台所でやかんの水が沸騰する音は危険を知らせてくれます。
ところが、加齢にともない耳が聞こえづらくなると、そんな音から遠ざかってしまうのです。聞こえの低下を防ぎ、周りの音とつながっていることは健康長寿には欠かせませんが、その助けをしてくれるのが補聴器なのです。
そこで本書では、最初の章で聞こえないリスクについてお話しすることにします。それから、補聴器購入前の注意点、補聴器の種類や価格、失敗しない補聴器の選び方、補聴器購入後のアフターフォロー、補聴器を使いやすくするトレーニング方法という順番で話を進めていきます。
補聴器について知るのはまったくはじめての方にもわかりやすくするため、専門用語をできるだけ使わずお話ししていきます。
補聴器を着ければ、20年前、30年前の聞こえに戻れると勘違いされる人がいますが、補聴器はけっして万能ではありません。大切なのは、自分の耳の状態を正しく理解しながら、上手に付き合うことです。そうすれば、補聴器は間違いなく皆さんの心強い相棒(=パートナー)になってくれるはずです。
それでは、次の頁を開けて、私と一緒に補聴器の世界に入ってみましょう。
目 次
もくじ◎間違いだらけの補聴器選び
はじめに
1章 「このごろ聞こえにくい?」と感じたら
補聴器のクレームが増える本当の理由
聴力低下は視力低下ほど自覚がない
高音域から聞こえにくくなっていく
【一口メモ】 聞こえないのは低音ではなく小さい音
「このごろよく聞こえない」に潜む危険
聞こえ方の変化をどう受け止めるか?
“補聴器は年寄り臭い”は昔の話
現状維持タイプのプラス面とマイナス面
「年齢相応で、それだけ聞こえていたら大丈夫」と言われたが……
補聴器との前向きな付き合い方
2章 間違いだらけの補聴器との付き合い方
補聴器に慣れるには時間がかかる
○生活音が雑音に聞こえてしまう
○耳に着けたとき違和感がある
○補聴器の扱いが意外に難しい
補聴器Q&A
【一口メモ】加齢性の難聴はこうして起こる
補聴器を着ける“もうひとつの目的”
自分の耳の状態を客観的に理解しておく
慣れてくれば解決できること、慣れても解決できないこと
【一口メモ】テレビの音がよく聞こえるようにする方法
50年前の耳ではなく10年前の耳を目指す
補聴器の弱点も知っておく
思い描いていた効果が得られなくてストレスを感じたら
補聴器と仲良く付き合いはじめるために
3章 意外と知られていない補聴器の種類と価格
『補聴器っていくらぐらいするんだろう?』
補聴器の代金の内訳
補聴器の価格を左右する3つの要素
【一口メモ】補聴器の割引について(兼業店と専門店)
補聴器の種類と値段から見た選び方
☆箱型補聴器
☆耳かけ型補聴器
☆耳あな型補聴器
☆RIC補聴器
補聴器の機種決定で失敗しないために
【一口メモ】契約書には契約内容も加えてもらう
片耳装用と両耳装用の違い
アメリカでは両耳装用が大半
補聴器をめぐる2つのエピソード
4章 間違いだらけの補聴器選び
誰に相談するのがいいか
補聴器のメーカーを選ぶには
補聴器はどこで買うべきか?
自分に合った補聴器取扱店に出合う秘訣
補聴器選びで失敗しない7つのチェックポイント
1購入決定時は家族や友人・知人に同席してもらえるか?
2購入前の貸し出しは可能か?
3購入した補聴器が合わないときの対応は確かか?
43社以上のメーカーの補聴器を取り扱っているか?
5担当者のレベルはどうか?
6補聴器のデメリットに関する説明はあったか?
7セカンドオピニオンを求めたか?
補聴器選びに役立つエピソード
5章 いつまでも補聴器と上手く付き合うために
初心者が躓きやすい代表例
☆事例1 操作が難しい
☆事例2 自分の声がおかしい
☆事例3 会話よりも周りの音が気になる
☆事例4 期待していたほど、音や会話が聞こえない
☆事例5 突然の大きい音にビックリする
【一口メモ】自然の音を手軽に楽しむ方法
調整をくり返すほど補聴器と付き合いやすくなる
「聴能トレーニング」で言葉を聞き分ける脳と耳の力を回復
おわりに