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論理的思考力がぐ〜んと伸びる こども「思考実験」

ロンリテキシコウリョクガグ〜ントノビルコドモ「シコウジッケン」

「考えるって楽しい!」の体験がいちばん

北村良子著

論理的に考える力は生き抜く力!

「思考実験」は頭の中で行なう実験。しかし、特別な道具も実験室も必要はない。いつでもどこでも頭の中で楽しくできて、考える力がぐ〜んと伸びる! 本書では、1人の先生と4人の生徒が14の思考実験に取り組みます。読者のみなさんは、彼らに加わったつもりで思考実験を行なってみてください。

主な内容

思考実験①どちらの選択がお得? 『ニューカムのパラドックス』
思考実験②矛盾がある? ない? 『張り紙禁止の紙』
思考実験③追いつく? 追いつかない? 『アキレスとカメ』
思考実験④言葉の意味だけで判断していい? 『抜き打ちテスト』
……

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論理的思考力がぐ〜んと伸びる こども「思考実験」
価格
1540円(本体1400円)
判型
四六判
頁数
236 頁
発行日
2018.3.9
ISBN
978-4-87795-363-8

立ち読み

はじめに

 考えるのは苦手だと感じている人は、考えることはつらいことで、忍耐が必要だから好きになれないと思っているかもしれません。それでは、いくら考える力を伸ばそうとしてもうまくいきません。

 たとえば将棋の名人は、こどものころから打つ手を考えることが楽しくてしかたなかったのだと思います。だから、戦略を考える力がどんどん伸びていったのでしょう。

 将棋に限らず、考える力を伸ばす最大のコツは、考える楽しさを体験することなのです。大人になってからでもいいのですが、できればこども時代に、この体験をしたほうがもっと効果的に考える力は伸びていきます。

 そのために、ぜひ体験してほしいのが「思考実験」です。ご存知ですか?

 思考というのは頭の中で行なうものですね。ですから、思考実験とは頭の中で実験を行なうことです。

 でも、思考とか実験という言葉を見ると、何か難しいことをするように思われますか。これがやってみると、本当に楽しいのです。

 理科の実験のような特別な道具は必要ありません。必要なのは、「考える」ことです。

 提供される題材は考えることの楽しさを体験するのに最適なものばかりです。想像が膨らみ、論理的に考えるトレーニングにぴったりです。気づいたら、論理的思考力が身についています。

 今から2200年以上前の紀元前3世紀、ギリシャで生まれた天文学者のアリスタルコスは、太陽と月の関係から、宇宙の中心は地球ではなく太陽なのだと考えました。このころの人々は、地球の周りを宇宙の星々が回っているという天動説を信じ、それが当たり前の常識でした。アリスタルコスはそんな常識を疑い、こんな思考実験をしたのです。

「もし、地球が太陽の周りを回っているとしたら……?」

 私たちが知っている地動説を最初に唱えたのは、16世紀の天文学者コペルニクスですが、それよりもはるか昔にそれを考えたのです。

 何よりアリスタルコスという人は、頭の中で自由に想像し、考えることが面白くて仕方なかったのだと思います。

 もちろん、今の時代のような観測衛星はありませんし、惑星を観測できるような望遠鏡などもありませんでした。ですから、できることは想像力と論理力を駆使すること、つまり考える力を最大限に利用して頭の中で実験することでした。これが思考実験です。

 思考実験は、実際にはできないこと、たとえば費用がかかりすぎたり、技術的に難しかったり、人道的に問題があったり、時間がかかりすぎたりする実験を、頭の中で自由に行なうものです。

 この本には14の思考実験が載っています。正解がない問題も多いです。「なんだ、正解がないものを考えても仕方がないじゃないか」と思う方もいるでしょう。しかし、私たちの人生で考えなければならないことのほとんどには正解がありません。

 たとえば、将来のことを考えてみてください。どの職業に就くのが正解でしょうか? 大学に進むとしたらどの学部が正解でしょうか? 答えなんて誰も教えてくれませんし、確かな正解があるわけでもありません。

 レストランに行ったとき、何を頼むのが正解か? という問題に答えがあるでしょうか。映画を観に行く前に、この映画は自分にとっていい映画かどうかは多分観てみなければわかりません。

 世の中には正解がないもののほうが多いのです。そのなかで、私たちは常に考え、より良い選択肢を選び、決断しなければいけません。

 想像力と論理力を使って考えることは、私たちの人生においてとても大切です。できることなら、こども時代に身につけたいものです。

 今は情報が溢れかえっている時代です。たとえわからないことがあっても、インターネットで調べればすぐに答えが見つかります。そのために、自分で想像し、論理的に考え、自分なりの答えを見つける機会が圧倒的に少なくなってきています。

 ところが、大人になって社会に出たとき、いちばん必要とされるのは“自分の考え”をもつことです。それには、考える力を身につけておくことがとても大切なのです。

 では、どうしたら考える力、論理的思考力は育つのでしょうか。必要性はわかっても、具体的に何をしたらいいのでしょうか。

 そのためにぜひ試してほしいのが「思考実験」です。考えるというと、なかなか解けない難しい問題に取り組んでいるイメージがあるかもしれませんが、それでは、考える力は育ちません。

 脳は楽しいことに熱中します。熱中しているうちに脳は新たな力を開花させていきます。考えることも同じです。脳は考えることが楽しいと感じることに集中しますし、もっともっと考えて楽しもうとします。気づいたら、脳は考える力を開花させています。

 この考える楽しさを体験できるのが、本書にある思考実験です。一通り終わったとき、あなたの脳は、考えることは面白そう、本当に楽しいと感じていることでしょう。これが、論理的思考力を育てる最大のエネルギー源になるのです。

 本書では、1人の先生と4人の生徒が14の思考実験に取り組みます。読者のみなさんは、彼らに加わったつもりで思考実験を行なってみてください。読みながら、必ず「自分ならどう考えるか?」と思考の実験をすることを忘れないでください。その過程で考える力が身についていきます。

 いよいよ思考実験の幕を開けます。

 ある日の放課後、学校の教室で仲良しの4人が会話をしています。読者のみなさんも、彼らと一緒に「思考実験の旅」を楽しんでみてください。

目 次

論理的思考力がぐ〜んと伸びる こども「思考実験」……もくじ

はじめに

思考実験①どちらの選択がお得? 『ニューカムのパラドックス』

ミチルは90%とか95%、未来を予測できる特別な生き物である。AとBの2つのハコを使ってミチルとゲームをする。挑戦者はミチルの予測に対して、どこまで有利な選択をすることができるだろうか?

思考実験②矛盾がある? ない? 『張り紙禁止の紙』

張り紙が禁止されている公共の壁がある。そのことを知らせるために、この壁に「張り紙禁止」と書かれた張り紙をすることは、“張り紙禁止”という決まりを破っていることになるだろうか?

思考実験③追いつく? 追いつかない? 『アキレスとカメ』

俊足のアキレスと、鈍足のカメが競争をすることに。ただそのままではアキレスが勝つに決まっているため、カメはハンデをもらってアキレスより前にスタート。ところが、1人の老人が、俊足のアキレスはいつまでもカメに追いつけないという。どこに矛盾があるか?

思考実験④言葉の意味だけで判断していい? 『抜き打ちテスト』

国語の先生が「来週、誰も今日だと思わない日に抜き打ちテストを行なう」と予告する。それに対してケンタは、月曜日から金曜日までどの日も本当はテストがないと推理してしまうが、テストは行なわれる。ケンタの推理の間違いはどこにある?

思考実験⑤どちらもまったく同じ。あなたはどっちを選ぶ? 『ビュリダンのロバ』

ロバの目の前に2つの道がある。ロバからはまったく同じ距離に、まったく同じ干し草が同じ量だけ置いてある。ロバにとって2つの干し草はまったく同じで、どちらを選んでもいいが、どちらも選べずにロバが餓死したのはなぜ?

思考実験⑥一瞬? それともとてつもなく長い? 『5億年ボタン』

「5億年ボタン」は奇妙なボタンである。これを押すと100万円が手に入るが、別の空間に体が転送され、そこで5億年を過ごさなくてはならない。ただし、その間少しも年を取らないし、終了すればボタンを押した直後の状態に戻り、記憶が消され一瞬で終わったと感じる。さて、このボタンを押すのは得か損か?

思考実験⑦過去を変えたら今はどうなる? 『タイムマシン』

2989年、ついにタイムマシンが完成。15歳の少年タツキの母親は12年前、タツキが3歳のときに事故で他界。母親のお腹には妹になるはずの胎児がいた。タツキはタイムマシンで3歳のときに戻り、事故を防ぐことに成功。さて、妹はどうなった? この話にはどんな矛盾があるか?

思考実験⑧確率は同じ? 違う? 『3つの紙コップ』

伏せた3つの紙コップA、B、Cのどれか1つに金色のボールが入っている。直感的にはどれを選んでも可能性は同じで、実際の確率も3分の1ずつ。サクラはAを選び、仕掛け人がBのコップを開けると入っていない。サクラはもう一度AかCを選び直せる。どちらにボールが入っている可能性が高いか、直感と実際の確率が異なるのはなぜ?

思考実験⑨モノが無限に増え続けたら……? 『バイバイン』

「バイバイン」はドラえもんのひみつ道具。のび太が栗まんじゅうにこの液体を垂らすと、5分毎に2個、4個、8個と倍々に増えていく。それより早く食べきらないと増え続ける。結局、食べきれず宇宙に飛ばしてしまう。宇宙に飛ばされた栗まんじゅうはどうなるか、「バイバイン」を安全に使う方法は?

思考実験⑩助ける義務はある? 『バイオリニストと特効薬』

特殊な血液をもつ世界一のバイオリニストの命を助けられるのはまったく同じ血液をもつ自分だけである。気づくと、バイオリニストと自分のベッドが並び、2人はチューブで繋がっている。特効薬開発までの9カ月間だけチューブで繋がっていれば助けられるが、自分の自由を犠牲にしてまでする義務はあるか?

思考実験⑪頭で知っていることと見て知ることは違う? 『マリーのゴーグル』

マリーは目の治療のために白黒しか見えないゴーグルを付けて育つ。色について人一倍興味をもち、色についてあらゆる知識はもった。その後、目が改善しゴーグルをはずして実際に色を見るが、色について新たに何を知っただろうか?

思考実験⑫大勢の人を救えるなら1人を犠牲にしてもいい? 『臓器くじ』

ある国で「臓器くじ法」が施行された。くじで選ばれた1人の臓器を使って、臓器提供を待つ5人を救うという法律がある。これによって、より多くの人が幸せになると考えられている。たいていの人はおかしいと感じるだろうが、ではいったいどこがおかしいのだろうか?

思考実験⑬本物はどれ? 『テセウスの船』

伝説のテセウスを乗せた船は人々の誇りだが、老朽化してきたため、古くなった木材を順次取りはずし、新しい木材に交換していった。その作業を続けているうちに、すべての木材が交換された。そこで取りはずした古い木材でもう1つの船をつくると、テセウスの船が2つに。どちらが本物のテセウスの船といえるだろうか?

思考実験⑭同じだけど違う? 違うけど同じ? 『スワンプマン』

クリフは沼で落雷に遭い死ぬが、別の雷が落ちると、不思議なことに死んだクリフの体に化学反応が起こり、細胞も記憶もクリフとまったく同じ「沼クリフ」が出現。「沼クリフ」は落雷で死んだ瞬間の記憶以外はクリフとまったく変わらない。家族とも以前と同じく過ごしている。2人のクリフはまったく同一の人物といえるだろうか?

プロフィール

北村良子(きたむらりょうこ)

1978年、千葉県生まれ。有限会社イーソフィア代表。パズル作家としてWEBで展開するイベントや企業のキャンペーン、書籍や新聞、雑誌等に向けたパズルを作成している。

主な著書は『60歳からの脳のいいパズルはどっち?』(コスモ21)『論理的思考力を鍛える33の思考実験』(彩図社)『一流の考え方が身につく思考実験ビギナーズ』(宝島社)他。