日本経済への遺言 記者が見続けた半世紀
ニッポンケイザイヘノユイゴン キシャガミツヅケタハンセイキ
大蔦勝威著
明日への希望を提言!
日本経済に明日はあるのか
半世紀を超えてジャーナリストとして、経済学者として、一貫して日本経済を見続けてきた著者が、厳しい現実に目をそむけることなく、明日への希望を提言!
「もはや戦後ではない」――これは1956年の「経済白書」の序文に書かれた一節といわれるが、その「白書」から5年後の61年に社会人となり、以来ジャーナリスト、経済学者として半世紀を超えて見続けてきた著者だからこそ語れる日本経済の実像が述べられている。
新聞記者時代に出会った大事件とそのウラに隠された人間模様が、「時効と勝手に決めて踏み込んだ」という著者の言葉どおり、生き生きと蘇ってくる。とりわけ、沈没の危機にあった日本を救った「賢者」のチエは、半世紀以上を経た現代にも通じるものである。
さらに著者は、「経済二流国」に落ち込んだ日本経済の現状分析を行い、目の前の惨状から抜け出す方策を探っている。
そこには、ジャーナリストとして、経済学者として、厳しい現実に目をそむけることなく、日本経済を見続ける視点が一貫しており、だからこそ、明日への希望を提言する一書となっている。
著者は日本の学校教育において経済教育が軽視されていることを案じ、経済教育にも力を注いできたが、本書がその一翼を担うことも願っている。
- 価格
- 1650円(本体1500円)
- 判型
- A五判
- 頁数
- 160 頁
- 発行日
- 2022.10.14
- ISBN
- 978-4-87795-420-8
立ち読み
はじめに
「もはや戦後ではない」――1956年度の「経済白書」の序文に書かれた一節で、戦後復興の終了を宣言した象徴的な言葉として流行語にもなった。執筆責任者は官庁エコノミストの第一人者と言われた後藤譽之助。
当時の日本は戦後復興の時期で、日本経済は、朝鮮特需の影響もあり、戦前の水準に向かって順調に回復していった。
「回復を通しての成長は終わった。今後の成長は近代化によって支えられる」という序文の一節には、戦前水準への復帰を果たした達成感と、今後の成長への不安が入り混じっていたことがうかがわれる。
あれから66年。「白書」から5年後の61年(昭和36年)、私も社会人となり、半世紀を超えてジャーナリスト、大学教授など立ち位置に変化はあったものの、一貫して日本経済を見続けてきた。
今回、「日本経済への遺言」として、「新聞記者時代に出会った大事件とそのウラに隠された人間模様」(第1章)、「『経済二流国』に落ち込んだ日本経済の現状分析」(第2章)、「惨状から抜け出す方策を探る」(第3章)に分けて書いてみた。オフレコ(記事にしない約束で話を聞くこと)部分まで「時効」と勝手に決めて踏み込んだ第1章の「余滴」は、ぜひ読んで頂きたい。
目 次
日本経済への遺言 記者が見続けた半世紀……もくじ
はじめに 3
第1章 「賢者」のチエが日本沈没を救った
山一證券倒産と田中蔵相
〈余滴〉影武者がいた
日米繊維交渉と田中通産相vs宮崎輝
〈余滴〉宮崎輝を語る
為替変動相場制へ移行――日本経済最大の試練へ
〈余滴〉開け放しだった玄関
田中内閣誕生と日本列島改造論
〈余滴〉度量をみせた「夜回り懇談」
日中国交回復と中曽根通産相訪中
〈余滴〉私が見てきた中曽根康弘
オイルショックと狂乱物価
〈余滴〉賃上げ抑制に奮闘した桜田武
土光敏夫と経団連会長&臨調
〈余滴〉秀才とは無縁、母の遺訓を守る
バブル発生と崩壊
〈余滴〉平成元禄 浮かれていませんか
「地獄」をみた1997~98年の金融危機
〈余滴〉最後の意地
日米の明暗を分けたITバブル
サブプライムローン「焦げ付き」とリーマン・ショック
第2章 厳しい現実に目をそむけるな
GDP(国内総生産)低迷が全ての元凶
財政は実質破綻している
国の借金1,241兆円、1人当たり1,011万円
金融激変は2013年4月に始まった
赤字国債は1974年度までは発行されていなかった
日銀の国債保有割合50%超す。海外勢と攻防戦へ
ポンド危機
アジア通貨危機
日銀が抱えるもう二つのお荷物
主要項目別競争力でもジリ貧
労働生産性の国際比較
軽視されている経済教育
働き方改革を検証する
第3章 日本経済に明日はあるか
GDP低迷脱却に奇策はない
プライマリーバランス黒字化は100年後もムリ
黒田退任後、「出口戦略」をどうするか
株式買い上げ機関創設・移管も一つの方法
経済教育 個人の熱意だけが頼りか
「テレワーク」――普及には限界
付 章 けいざい余話
[第一話]石橋正二郎、松下幸之助の決断――創業経営者が子息を「斬った」勇気
[第二話]老舗を継いだ経営者――「役員の子弟もダメ」徹底する武田国男
[第三話]カネボウの悲劇[第四話]「塩爺進言」なければ……
おわりに