世界でみつけた! 噴水と過ごす「幸せ」な時間
セカイデミツケタ!フンスイトスゴス「シアワセ」ナジカン
心を癒す街角の記憶 100カ国3000カ所以上を訪ね歩いて出会った噴水コレクション
文と写真・地蔵保幸
本を開くと、幸せな時間が広がる!
噴水は世界の共通言語
本を開くと、噴水と過ごす幸せな時間が広がる!
「噴水の周りで、幸せそうに過ごす人たちを見ていたら、なぜかとても感動するんだ!」
世界の街角や公園には必ずといっていいほど噴水があります。そしてその周りには、いつでもどこでも心がホッとする空間があります。世界3000カ所以上の噴水を訪ね歩いた著者だから見つけることができた噴水コレクションから、今回はとっておきの63点を取り上げています。現地で、肌で直接感じなら最高の瞬間を写真に収めました。しかも、その場の臨場感たっぷりの情景描写は、実際にそこにいるような感覚にいざなってくれます。
コロナ禍で世界を移動することが難しい今日、本のなかで噴水体験をしながら幸せな時間を過ごしませんか。
著者は中学2年生のとき、一人で日本周遊の旅をしました。ある旅先で近くの公園まで散歩をしていると、そこに噴水があり、人々が周りでとても楽しそうに過ごしています。その風景にとてもワクワクしたことが、その後何十年にもわたる、噴水を訪ねる旅の始まりになりました。
「おそらく、私ほど世界の噴水を見て歩いた人はいないでしょう」と言う著者が、噴水との出会いで人生をもっと豊かに過ごしてもらいたいと願い、この本が出来上がりました。
立ち読み
●はじめに 噴水の魅力にふれて
1979年、私はまだ何の目標や目的もない少年でした。
その年、両親が日本周遊の一人旅に行かせてくれました。
3週間だけ。でも、とっても長い夏の3週間。
きっと成長させたかったのだと思います。何の目的もなく過ごしている息子を。
それは中学2年生の私にとって凄く怖い経験で、旅先に着いても、緊張であまり動きまわることができませんでした。
ある日の夕方、買物のついでに近くの公園まで散歩したことがあって、もう場所は覚えていないのですが、そこに一つの噴水があったのです。
噴水の周りにいた楽しそうで、幸せそうに談笑する人たち。その人たちを見ていたら、なぜかとても感動しました。
そのときです。「他の噴水を見てみたい!」と思ったのは。
自分で何かをしたいと心から思ったのはそのときが多分はじめてでしょう。この感動の正体が何なのかはよくわかりませんでしたが、ただそれがとてもワクワクしたものだったことだけは覚えています。
40年経った今になって思えば、これは私にとっての小さな成長でした。それ以来、私は噴水ファンの一人として、何かにつけ噴水と出会うために世界中を旅しています。
ファンの楽しみ方はいろいろです。噴き出される水の高さや大きさ、形状に魅了されている人や、銅像や水盤など、水によって新たに命が吹き込まれた「造形物」に思いを巡らす人、水に触れたい人や水音に包まれたい人などなど。
興味関心は人それぞれですが、私の楽しみ方は、ただただ噴水を見て感じることです。これは第六感を働かせるというより、一種の洞察といえるでしょう。
噴水はある意味、目に映る姿が常に新陳代謝しているので、視覚的に観察するだけではなく、その奥底を見通していくことで、はじめて感じられるものがあります。そもそも、一つの噴水の背景には、そこで暮らす人々の生活や環境、そして文化があります。多くの事柄が互いに影響し合って醸しだされている本質を見抜いていくのです。
時折、「あの噴水と、この噴水の何が違うの?」と聞かれることがあります。しかしそれは、飲料水と海水の何が違うのと言われているようなものです。
私はこれまでに、世界六大州約100カ国の噴水に会いに行くことができました。四季の変化が明確な日本においては、だいたい10月下旬から4月初旬、特に真冬は噴水の水が噴き出されていないところが多いので、出会うのも一苦労ですが、全都道府県に至っては何周も巡り噴水を探し回ってきました。
世間に広く知られているものから、知られていないもの、人目につくものから、人目につかないものまで。
世界中の約3000カ所以上の噴水を見てきて思うこと、それは、水と造形物の融合によって現われる素晴らしさと、そこに存在する噴水の意味と意義です。
今回、皆さんが手にとってくださったこの本には、噴水の素晴らしさと可能性が書かれています。その魅力はもちろん芸術の力であり、さらにはなにか魔力的ともいえるような神秘的な力、水の力や霊力のようなものを合わせもっています。ぜひ、それを感じてください。
流水も、流れが2つ以上重なれば噴水になり、
放水も、放たれる水に風が強く吹きつければ噴水になり、
散水も、飛び散る水に犬が戯れれば噴水になり、
落水も、山肌からただ滴り落ちるのではなく、そこに意図があれば噴水になり、
湧水も、こんこんと湧き出す水の側で子供が笑顔になれば噴水になります。
噴水、それは水と造形物との果てしない可能性。
互いの歩み寄りから生まれた私たちへの贈り物。
世界中には、さまざまな場所にさまざまな種類の噴水があります。公園の中の噴水、交差点の噴水、駅前の噴水、ビルの谷間にある噴水、文化施設の美術館や博物館の噴水、街やホテルのシンボリックな噴水、家の庭にある家庭用噴水、最近では室内噴水や卓上噴水などバラエティに富んでいます。
造形物のデザインや大きさ、材質、水の量や形に高さなど、国や地域、文化や目的によってもその傾向は異なります。基本的には水と造形物のシンプルな組合せですが、多様な表情を生み出しているのです。
「所変われば品変わる」という言葉がありますが、一見同じように見えても、噴水もまた所変われば別のものに変わります。何か越しに見ると表情が変わって見えるとでも言いましょうか。置かれた環境によって姿かたちの印象や意味の異なるものとして、それぞれが唯一無二の存在感を出しています。
噴水にはそんな魅力と可能性があるのです。
最近では、高々と空高く噴き上げられる大噴水や、ライトアップと音楽がコラボレーションしたイルミネーション噴水ショーなども人気を集めています。
ただ見ているだけでもその美しさは私たちの目を楽しませ、心を癒しますが、造形物と水がつくりだす空間は、そこに身を寄せる私たちに、本を読む場所、休息する場所や食事の場所、待ち合わせ場所などを提供してくれます。そこはまるで、人と自然が溶け合っているかのような憩いの場所です。
噴水には存在するにふさわしい価値があります。
だからこそ、そんな噴水の存在感が、多くの人を引き寄せているのでしょう。
噴水は自然の恵みである水の特性を利用して、人間によってつくられたものですが、そこには自然と人間との共生を感じずにはいられません。
噴水の周りに人が集まるのは、噴水のある場所に幸せがあるからです。そう考えると、人生は噴水探しのように思えます。
目 次
世界で見つけた! 噴水と過ごす「幸せ」な時間……もくじ
●はじめに
PartⅠ 世界で出会った「感じる噴水」
トンネルを抜けると… フランス/ベルサイユ(ベルサイユ宮殿のエンケドラスの噴水)
美しい庭に現れた、大海原 カナダ/トロント(カサ・ロマのお庭の噴水)
まるで美術館のようなローマの交差点 イタリア/ローマ(4つの噴水〔クワトロ・フォンターネ〕)
日常の中に、優しく噴き出す フィリピン/マニラ(barangayの環状交差点の噴水)
6本の水が守る、三人の女性 チリ/サンティアゴ(ヌエバ・ヨークで見かけた噴水)
狭い通りに、小さいカメさん イタリア/ローマ(亀の噴水)
天空を背負う男性像 オーストラリア/メルボルン(Gordon Fountain)
イブと向き合うアダム、そこにあるのは… ロシア/サンクトペテルブルク(「ペテルゴフ」夏の宮殿 アダムの噴水)
大海原へ、ここから旅立て チリ/サンティアゴ(Parque Forestalの噴水)
パリの街で見るサン・ピエトロ広場 フランス/パリ(コンコルド広場の噴水)
勇ましき馬、馬、馬!! インドネシア/ジャカルタ(Patung Kuda Arjuna Wijaya)
ダンスをする12羽の鶴 オーストラリア/シドニー(鶴の噴水)
これは「小便小僧」? それとも… アメリカ/カンザスシティ(カントリー・クラブ・プラザ内で見かけた小便小僧風の噴水)
この鹿さん、近づくと危険… オーストリア/ザルツブルク(ヘルブルン宮殿 鹿の壁掛け仕掛噴水)
ワンちゃんから、噴水!? カナダ/トロント(バークジーパーク 犬の噴水)
テベレ川の氾濫を生き延びた、頼もしき舟 イタリア/ローマ(バルカッチャの噴水)
帽子の上には、おしどり夫婦 日本/栃木県佐野市(JR佐野駅前「おしどり」像の噴水)
カメが、3羽!? 日本/東京江東区(亀戸駅前公園の亀の噴水)
勢いよく昇れ! ベトナム/ハノイ(旧市街のシルク店内で見かけた鯉の滝登り噴水)
公園の中に、イルカ?? オーストラリア/メルボルン(Dolphin Fountain)
「アザラシとサーフィンをする少年」の童話がモチーフ アメリカ/ハワイ(ワイキキ クヒオビーチ パブリックアート「マクア アンド キラ」)
みずかめ座のモデル「水の女神グラ」 スペイン/マドリード(Fountain of the Birth of Water)
怪物から子どもたちを守る母、「ラトナ」 フランス/ベルサイユ(ベルサイユ宮殿のラトナの噴水)
海の支配者「トリトン」の力強さ ロシア/サンクトペテルブルク(「ペテルゴフ」夏の宮殿 トリトンの噴水)
広大な海原と、海の神ネプチューン チリ/サンティアゴ(サンタ・ルシア・ヒル〔Cerro Santa Lucia〕のネプチューンの噴水)
緑の壁に並ぶ、無数の噴水 イタリア/ローマ(チボリのエステ家別荘「百の噴水」)
お尻から、ぴゅーっと来ます! オーストリア/ザルツブルク(ヘルブルン宮殿 椅子の仕掛噴水)
見たこともない巨大な宝石 シンガポール(チャンギ国際空港ジュエル〔Jewel〕の「雨の渦」)
岩の男! 噴き出される汗! スペイン/マドリード(El Corte Inglés Serrano 47前の噴水)
この像は何を背負い、何を守るのか… オーストラリア/メルボルン(フィッツロイ・ガーデンのRiver God fountain)
イルカと少女のダンス! イギリス/ロンドン(Girl with a Dolphin Fountain)
キノコの中には、おとぎ話の世界が… ロシア/サンクトペテルブルク(「ペテルゴフ」夏の宮殿の庭園噴水フォンタン・ゾンチク)
水たばこと噴水で、ひたすら水に癒される マレーシア/クアラルンプール(ロット10ショッピングセンター前のBukit Bintang Streetで見かけた噴水)
水の絵具で描かれた「絵画」 モロッコ/マラケシュ(マジョレル庭園エントランスの噴水)
巨大な噴水を下から見ると… イタリア/ローマ(チボリのエステ家別荘「大グラスの噴水」)
圧倒的な迫力! イタリア/ローマ(チボリのエステ家別荘「ネプチューンの噴水」)
水柱に囲まれる静謐な空間 フランス/ベルサイユ(ベルサイユ宮殿の列柱廊の噴水たち〔Bosquet de la Colonnade〕)
シンプルだけどエレガント! 見る人を別世界へ マレーシア/クアラルンプール(ムルデカ・スクエア〔独立広場〕の噴水〔Queen Victoria Fountain〕)
踊る男女と、喜びに溢れた子どもたち! イギリス/ロンドン(ハイドパークのJoy of Life Fountain)
時計台の前にある憩いの場所 フランス/パリ(ジュルジュ・ブラッサンス公園の噴水)
植物と共に「光」を吸収する カナダ/トロント(カサ・ロマ内の噴水)
イカロスのような勇ましさ スイス/ブリーク(ブリークの旧市街〔Sebastianskapelle辺り〕で見かけた噴水)
怖い? 可愛い? 伝説の動物「マーライオン」 シンガポール(マーライオンパーク)
ロケットのような巨大な彫刻、噴き出す水はまるで白煙! スペイン/マドリード(スペイン広場〔プラサ・デ・エスパーニャ〕 Monumento Cervantes)
水が噴き出す花の中で、何を願う… スイス/ベルン(J. V. Widmann Fountain)
植物の中にたたずむ重厚な彫刻物 オーストラリア/メルボルン(カールトンガーデンの噴水〔Houchqurtel Fountain〕)
みる角度によって変わる「魔法の泉」 スペイン/バルセロナ(マジカ噴水)
太陽が教える時間、噴き上がる水しぶき 日本/福島県郡山市(平成記念郡山こどものもり公園 太陽の広場 日時計の噴水)
ようこそ、ソウルへ♪ 韓国/ソウル(金浦空港前の噴水)
砂地の庭の、その先に… チリ/サンティアゴ(Viña Santa Rita〔ワイナリー〕のお庭の噴水)
砂漠の中のブルー! モロッコ/マラケシュ(マジョレル庭園のマジョレル・ブルーの噴水)
魚たちが称える、太陽の恵み ロシア/サンクトペテルブルク(「ペテルゴフ」夏の宮殿の庭園噴水フォンタン・ソルンツェ)
主役は、黄金の男性! 日本/岩手県盛岡市(県営運動公園の噴水)
豊かな緑と花の中に、岩?? 日本/神奈川県(県立四季の森公園の噴水)
噴水の中に現れるギリシャ神話 オーストラリア/シドニー(ハイドパークのアーチボルド噴水)
まるで一輪の花! 日本/熊本県上益城郡益城町(テクノ中央緑地公園の噴水)
この場所で、空と海が交わる! 日本/大分県別府(的ヶ浜公園の噴水)
偉大な芸術に挟まれて… フランス/パリ(ルーブル美術館前の噴水)
シカゴの街に佇む、優雅な噴水 アメリカ/シカゴ(ミレニアム・モニュメントの噴水)
地下からこんこん? チリ/サンティアゴ(サン・フランシスコ教会前広場の噴水)
幾何学模様のモザイクを使った「水の万華鏡」 モロッコ/カサブランカ(ハッサン2世モスク前の噴水)
水柱が噴き上がる! ペルー/リマ(レセルバ公園の噴水)
上等なワインのような味わい チリ/サンティアゴ(Vina Haras de Pirque〔ワイナリー〕のお庭の噴水)
●ジャンル別で見た世界の噴水
五つ星噴水/面白噴水/ゆっくり考えることに浸れる噴水 思考噴水/気持ちを解放できる噴水 感情噴水/高揚感を感じられる噴水/自分を一瞬忘れさせてくれる噴水/元気をくれる噴水/幸せを感じられる噴水/存在意義を感じさせてくれる噴水/何度見ても飽きない噴水/高級感のある噴水/癒される噴水
●私たちは噴水に何を求めているのか
PartⅡ もっと噴水のことを知りたいあなたに!
(一)噴水の効果について
噴水による癒しの効果
ひらめき効果/存在認知効果/ゆとり効果
くすぐる効果/気持ちを満たす効果
優しい気持ちになる効果/美的知性を磨く効果
自分だけのものと感じる効果/親近感を感じる効果
食事の満足度を高める効果/自分の居場所を感じる効果
気持ちを動かす効果/守られていると感じる効果
喜ばせる効果
【コラム】心のうちにあるさまざまな幸せに気づかせてくれる
噴き出される水の種類別効果
流水系/落水系/噴き上がり系/霧状系/飛び跳ね系/湧水系/放水系/散水系
【コラム】噴水の周囲の環境も大切
擬人化して見ると効果が倍増
☆噴水の水と造形物のバランスはヒトに似ている
☆噴水はまるで大切な人のように、私たちの「何か」を埋めてくれる
☆ありのままの噴水を深く味わう
心を癒す「噴水セラピー」
☆噴水を人に見立てて向き合う
☆噴水から必要なメッセージが聞こえる
☆「思考」「感情」の両面から人を感じる
☆噴水の「感情」を読み取る
☆「思考」を読み取る
☆そこにある噴水が「どんな人」なのか読み解く
☆「思考表現度」と「感情表現度」の組み合わせによる4つの基本型
☆こんな噴水があったらいいな、と想像することも大切
〈噴水表現度チェックポイント〉
【思考表現度チェック】
【感情表現度チェック】
☆光や天気によっても印象が変わる
☆表現度を理解して「自分に合う」噴水を見つける
☆心の働きをただ感じることで噴水に人を感じる
噴水はいつもあなたの味方
☆噴水はあなたの「チアファウンテン」
☆噴水に「会う」ことで応援を感じる
☆噴水はいつでもあなたを応援してくれる
噴水女子・噴水人
☆噴水に魅了される女性の増加
☆簡単には見つけられない噴水を求めて
☆噴水に出会うポイントは「歩くこと」
☆噴水にはまだまだ多くの可能性がある
(二)噴水を味わうときに覚えておいてほしい10のこと
(1)見てほしいタイミング
(2)噴水の見方
〈角度〉/〈方向〉/〈距離感〉
(3)噴水の見頃
①梅雨の時期を除く
②真夏の噴水が見頃といえない面もある
③台風シーズンを除く
④寒くない時期がおすすめ
⑤昼間の明るい時間帯がおすすめ
(4)噴水の見つけ方
(5)噴水を見る際のマナー
(6)噴水の歴史を知る
(7)記録する
(8)周囲の環境にふれる
(9)自分に合った噴水の見つけ方
(10)噴水との過ごし方
(三)噴水語り
噴水との小さな出会いの物語
「噴水が温かく迎えてくれた」
「噴水の水に母親を感じられる」
「噴水の前で撮った父と母の写真を見て」
「祈りの泉は平和のシンボル」
「世界一の噴水ショーに感動」
「噴水前での再会」
「大切なことをいつも感じさせてくれる」
「人の気持ちがすごく柔らかくなる」
「娘は噴水の水を拍手のようにとらえていた」
「息子も私も噴水が大好き」
●おわりに 噴水はあなたの力になる!