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究極のホスピタリティを実現する「共感力」の鍛え方

キュウキョクノホスピタリティヲジツゲンスル「キョウカンリョク」ノキタエカタ

AIにはできない、人にしかできない!/AI時代のホスピタリティ理論

安東徳子著

「共感」を必要とする仕事こそ人がすべき最後の仕事!

生活の中に急速に浸透しつつあるAI(人工知能)。これからさらに、AIが進化、さまざまなサービスを提供するようになっていく中で、「人にしかできないサービス」を究めていく必要に迫られている。そこでもっとも大切なことは共感力を鍛えていくことにある。究極のホスピタリティを実現するためのバイブル。

主な内容

プロローグ 人にしかできないサービスを究める!
第1章 共感したとき人は動く
第2章 ホスピタリティを高める共感力
第3章 共感の仕組み
第4章 思考習慣を変えて共感力を鍛える
第5章 感情的資質を養い共感力を鍛える
第6章 共感力を鍛えてホスピタリティをレベルアップする
付録 あなたはどのタイプ?
エピローグ 「お客様は奇跡的な存在」

詳細な目次のページを開く

究極のホスピタリティを実現する「共感力」の鍛え方
価格
1540円(本体1400円)
判型
四六判
頁数
172 頁
発行日
2017.9.4
ISBN
978-4-87795-357-7

立ち読み

プロローグ 人にしかできないサービスを究める!

AIによるサービスと共存する時代が到来する

 20世紀には、未来の技術と考えられていたAI(人工知能)。しかし技術はみるみるうちに発達し、今や身近なスマートフォンにも搭載されているほど、ポピュラーな技術になりました。今後はあらゆる場面で積極的に用いられるようになることでしょう。

 それは、労働人口が減少傾向にあるビジネスの現場でも起こってきます。AIが行なう業務は確実に広がっていきます。とくに、記憶力やデータに頼る業務はほぼ全てAIに任されることでしょう。

 そのようにAIに任せる業務が増えていくと、いわゆる「人にしかできない業務」のほかは仕事として残らなくなります。

 では、どんなに技術が進もうともAIにできないこととは、どんなことが考えられるでしょうか。

 AIの技術はすでに、相手の表情や声音をパターン認識で読み取ってストレス度を判断し、最適な対応ができる段階まで進んでいます。

 たとえば、コールセンターのAI化は着々と進行しています。宿泊の予約やパソコンの不具合についての問い合わせなど情報伝達や問題解決などの事柄はAIの得意分野ですから、スムースに対応して顧客満足度を高めることができるでしょう。

 ところが、AIがどんなに適切な対応をできたとしても、AIに決定的に不足しているものがあります。それは、感情を読み取る能力です。

 感情の起伏を感じられない人を「まるでロボットのような人」と表現することがありますが、そもそもAIには感情がありません。

 たとえどんなに感情が込められているかのように言葉を使うことができても、どんなに流暢な音声で言葉を発することができたとしても、私たちは、AIの言葉には「心がこもっていない」と感じます。AIには、生命体がもっている感情がないからです。

 ですから、とくに相手の感情に寄り添って対応しなければならないクレーム処理などは、決してAIにはできない業務です。人の感情を緻密に分析して相手の感情に合わせて言葉を発するAIであっても、それは感情が込められているように聞こえるだけで、生きた感情ではありません。

 それで、「真摯に対応してもらえた」と感じる人は誰もいないはずです。

 むしろ、ますます気分を害して「バカにしている!」と怒り出す人のほうが多いかもしれません。

 逆に、新入社員の拙い言葉であっても懸命に謝罪されると、「バカにしている」と思う人はそう多くないでしょう。感情が込められているからです。

 心がこもった謝罪は、何より顧客が味わっているであろう不快な感情を共有すること、つまり共感がなければ成り立ちません。

 これは、謝罪に限らず、人の喜怒哀楽に深く関わる場面でも同じです。

 たとえば、お祝いの言葉を伝えるとき、あるいは慰めの言葉を伝えるとき、AIが過去のデータからいちばん適切な言葉を選び、「おめでとうございます」「大変でしたね」と言ったとしても、共感が伴うことはないので、相手の心には届きません。

 今後、AIの技術がどんなに進歩したとしても、感情の共有が必要なコミュニケーションはできないでしょう。それができるのは人だけです。このことにこそ、「人にしかできない仕事」「人に求められる仕事」を理解する秘密があるのです。

「人にしかできない仕事」とは何か

 ここで、具体的に「人にしかできない仕事」とはどのようなものかを考えてみましょう。

 2015年の段階で人がしていた仕事を100とした場合、2025年はその半分の仕事が無くなるといわれています。電車の運転士、交番の警察官、プログラマ、通訳、印刷業者、受付業務案内、ネイリストなどは無くなってしまう職業の代表格とされています。

 すでに接客業では大きな変化が生まれています。ファストファッションやコンビニエンスストアの一部には、セルフレジが導入されていて、今後ますますレジの仕事はセルフレジに取って代わられると見られています。

 それでも、多くの人が「AIからは買いたくない」と感じる商品があります。たとえばネット販売は自動販売の一種としていち早く普及しましたが、この販売方法に向かない商品があります。

 そのひとつが、住宅。たいていの人は、セールススタッフや銀行の融資担当者と話をし、ときには彼らの個人的な感想まで聞いたうえで、購入するか否かを決定するでしょう。

 これから家を建てようという場合、いくらAIの情報や分析が精密だとしても、ネット販売に「土地の購入も設計も、全部お任せするので、この予算でうまく条件が合う家を建てて」と任せてしまうでしょうか。どんなにお金持ちであっても、一度くらいは専門家のプランを聞き、自分の意見を述べたいと思うものではないでしょうか。

 私の専門分野でもある結婚式でも同じです。よほど急いでいたり、会場からはるか遠方に住んでいたりといった特別な理由がないかぎり、たいていのカップルは、一度は会場を下見してウエディングプランナーと話をし、結婚式や披露宴の会場を決めます。

 ウエディングドレスを試着せずに決めてしまう花嫁さんもいません。試着をし、自分に似合うか、彼やご両親はどう思ったか、列席者はどんなふうに思うかといったことを考えて、その日のための特別な一着を決めます。

 婚約指輪もまた、あまりネット販売が普及しない分野です。プロポーズ用婚約指輪のネット販売が伸び始めている会社も出てきましたが、こうした会社でも購入前の電話相談や、購入後のデザイン変更オーダーなどのフォロー体制を密にする努力を行なっています。

 ここで、「ネット販売が普及しにくい商品」の特色を整理すると、次の5つのいずれかの条件に当てはまります。

(1)高額の商品である

(2)購入機会が特別な商品である

(3)購入する際に専門知識が必要となる商品である

(4)形態や発注が複雑な商品である

(5)実物を見ずに購入しなければならない、無形の商品である

 これらは、「人にしか売れない商品」です。つまり、その販売は「人にしかできない仕事」「AIにはできない仕事」なのです。

共感力を使う仕事は人にしかできない

 その理由は、すでに述べたように、「感情の共有」すなわち共感が大きく影響する仕事だからです。

 人にとって何かを決めるというのは、とてもストレスフルなことです。とくに高額なものや、特別なもの、専門的なもの、複雑なもの、無形のものの購入を決定することには、不安や期待が絡み合った強いストレスが伴います。

 また、スペックが豊富な商品を選ぶ場合、AIのほうが上手に情報を集めてお客様の好みに合った提案はできるでしょう。パターン認識を活用して「似合うかどうか」まで提案することも可能でしょう。

 しかし、AIは、

「これに決めたいけれど、なんだか不安だ」

「なんとなく嫌だ」

というような感情に寄り添い、その感情を共有すること、つまり共感することは不可能です。

 AIから

「ヨクオ似合いデスヨ」

「コノ食洗機ヲイレルト、家事ガ楽ニナリマスヨ」

と言われたとしても、そして、本当にその通りだったとしても、なんとなく腑に落ちないのではないでしょうか。

 いかにAIの言葉が人間の言葉に近づこうとも、それは人の心から直接あふれ出てくる言葉ではなく、プログラミングによるものです。目の前の相手の心に寄り添い、同じ気持ちを共有する、すなわち共感することで言葉を発することはできないのです。

 私たちは品物を選ぶとき、いろいろなスペックのものを比べながら、どれがいちばん自分に合っているかを検討します。そのとき、AIからどれだけたくさんの情報を提供されても、それだけでは決めかねるでしょう。結局最後は、「好き」「嫌い」という感情で決めてしまいます。

 ですから、優れた販売スタッフは、商品そのものだけでなく、売り場の雰囲気やスタッフにも好感をもたれるように工夫して総合力で商品を売っていきます。

「楽しい」「感じがよかった」「信頼できる」「嬉しい言葉をかけてくれた」「親しみをもてる」「スタッフが一生懸命だった」「正直だった」「お世辞を言わなかった」「心から喜んでくれた」など、好感というプラスの感情を生み出すものは全て動員します。

 そのうえで、お客様の気持ちに共感しながら感情面での手助けをしてあげると、お客様もこちらの提案を受け入れて決定してくれます。

 高級ブランドの試着を例にとりましょう。スーツを試着していただいたところ、その男性にとてもよく似合っていましたが、「何かが違う」という顔をなさっていました。

「デザインが好みじゃない」「仕事ができる雰囲気にしたかったのに、ソフトな雰囲気になってしまった」「太って見える」「ウエストが苦しくて気分が悪くなってきた」「高いはずなのに安っぽく見える」「こういうスーツの色には嫌な思い出がある」……

 その表情には、いろいろな可能性が考えられますね。

 AIにも、「不快な表情をした」というところまではとらえられるかもしれません。

 けれども、感情のサポートはできません。「何かが違う」という感情に寄り添い、その不快な感情を取り除き、より良い気持ちになれるような提案をすることまではできません。

 ほかの分野でも同じです。たとえば、看護や介護の仕事。肉体労働を軽減するような機械化は進むでしょうが、治療時の痛み、リハビリの辛さ、回復への希望、自分が自分でなくなっていく喪失感や孤独、そういった患者の感情に寄り添い、励まし、慰めること、すなわち共感することは、感情の働きをもつ人間にしかできないことです。

 就職活動をするときや結婚をするときなど、人生の大きな決断をするときも同じです。

 AIがあらゆる情報を総動員して分析し、条件がぴったり合っていることを提案してくれても、「じゃ、決めよう」とはなりません。それだけでは決めかねるのが人間だからです。

 信頼できる人や専門的な知識のある人、人生経験が豊かな人などに相談し、話を聞いてもらったり、助言をしてもらったりして背中を押してもらうことで決断することができるのです。

 自分のためを思ってかけられる言葉によって、マイナスの感情が軽減されて決断できた経験は、誰にでもあることではないでしょうか。

 このように相手の感情に寄り添い、その感情を共有する「共感」を必要とする仕事こそ、人がすべき最後の仕事だといえます。いえ、人だからこそできるもっとも価値ある仕事だと思います。

 逆にいえば、共感を伴わない人間の仕事は、なくなってしまいます。そして、共感力がない人は、AIとなんら変わりません。ですから人は、AIになってはいけないのです。

 私はこれまで、サービスビジネスコンサルタントとして、住宅、葬儀、旅行、IT、ウエディング、教育、美容、医療、レストラン、金融、ホテルなどの分野で、「究極のセールススキルとは何か」について考え、実践し続けてきました。

 その結果たどり着いた結論が、AIのような技術がいかに進もうとも、とくにサービスビジネスの世界においては「共感力」というスキルが必須であること、それはいつまでも変わらないということです。

 これからは、AIがますます進化し、さまざまなサービスを提供するようになっていくことでしょう。だからこそ私たちは、「人にしかできないサービス」を究めていく必要があります。そこでもっとも大切なことは共感力を鍛えていくことです。

 そのために、本書は大きな助けになるはずだと確信しています。さあ、ご一緒に新しいサービスビジネスの扉を開けましょう。

目 次

究極のホスピタリティを実現する「共感力」の鍛え方●もくじ

プロローグ 人にしかできないサービスを究める!

AIによるサービスと共存する時代が到来する

「人にしかできない仕事」とは何か

共感力を使う仕事は人にしかできない

第1章 共感したとき人は動く

 ――共感力コミュニケーション

共感と同感は違う

経済行動を決定する一番の要素も「好き嫌い」の感情

共感のベースにある自然言語処理能力

感情を使う仕事こそ高付加価値を生む

共感力コミュニケーションを確立

人は情報ではなく情景に共感する

『ECメソッド』の基本は「ごきげん」の感情コントロール

第2章 ホスピタリティを高める共感力

 ――ホスピタリティとコミュニケーション

共感力はホスピタリティの必須能力

ホスピタリティには2段階のプロセスがある

ホスピタリティの材料となる10の資質と4つの能力

コミュニケーションの4つのタイプ

第3章 共感の仕組み

 ――「5つのステップ」と「想定能力」

共感に至る「5つのステップ」

感情と理性を両輪で働かせる

分析力を左右する「想定能力」

第4章 思考習慣を変えて共感力を鍛える

 ――知性、探求性、論理性、肯視性、同調性

5つのステップにおける理性の働きに必要な資質

ポジティブな思考習慣を定着させる

ネガティブな思考習慣を変える

「知性」がコミュニケーションの幅を広げる

知性あってこそ会話の達人になれる

「探求性」は知的欲求のエンジン

探求性を使い、相手の真理に迫る

「そもそも」に立ち返るために必要な「論理性」

同調できなければ、正しく普遍化できない

第5章 感情的資質を養い共感力を鍛える

 ――純粋性、想像性、美性、創造性、品性

共感の5つのステップにおける行動原理の使い方

「共感できない」本当の理由は純粋性の欠如

想像性が仮説能力の基礎となる

仮説をできるだけ多く立てて「想像性」を身につける

共感力に不可欠な『感情のパレット』

「創造性」とは本質に立ち返っての「置き換え力」

品性ある人こそが共感力を発揮できる

第6章 共感力を鍛えてホスピタリティをレベルアップする

 ――傾聴力、立案力、説得力

共感のためのインプットとアウトプット

導入ではお客様の「ごきげん」を作る

傾聴に必要な質問力

会話を円滑にするアグリーメントアクション

共感力を働かせて「分析」し、「立案」につなげる

お客様の共感力に合わせたコミュニケーションを

「たとえ話」は共感させるための重要ツール

5種類の「たとえ」を使う

共感力を使ったホスピタリティのケーススタディ

付録 あなたはどのタイプ?

――コミュニケーションタイプ診断

あなたはどのタイプ?

「マル感」タイプに対するコミュニケーションの特色

「マル理」タイプに対するコミュニケーションの特色

「マル淡」タイプに対するコミュニケーションの特色

「マル共」タイプに対するコミュニケーションの特色

 

エピローグ 「お客様は奇跡的な存在」

プロフィール

安東徳子(あんどうのりこ)

明治学院大学社会学部社会学科卒業。広告代理店勤務、ピアノ講師を経て、1986年からウエディングプランナーとして活動。1992年、東京観光専門学校にて日本初となるウエディングの専門教育に着手し、1996年にウエディングプロデュース事業を立ち上げる。

その後、ホテル、結婚式場などのコンサルティング事業を開始。感情の働きを活用した独自の「エモーショナル・コミュニケーション・メソッド(ECメソッド)』を構築し、それに基づいた企業研修、セミナーなどを全国各地で行なう。美容系専門学校の創立に参画し校長に就任。コンサルテーションを担当。創立翌年から9年連続、所在県下で入学数1位を維持。

現在はサービスビジネスコンサルタントとして活躍し、サービス業に特化した研修は年間120回を超える。

現在は株式会社コスプレシーボ・コム代表取締役、株式会社ポジティーボ、一般社団法人日本ヘッドスパ協会理事。